#2-12 廃材


原発の放射線管理区域内から発生するものは、すべて放射性廃棄物として、 管理されてきた。ところが政府は、放射能のレベルの低いものは、一般の産業廃棄 物と同様にみなすという新しい基準、「クリアランスレベル」を導入しようとしている。これが実施されると、電 力会社は、解体廃棄物全体の98〜99パーセントまでを、普通の産業廃棄物のように捨てられる。
 政府案によれば、原子炉まわりをのぞけば、ほとんどすべてが「クリアランスレベル」以下として放射性廃棄物 として扱う必要のない廃棄物である。 原発はコンクリートと鉄の魂ですから、その解体によって大量の廃コンクリートと廃鉄材が発生。その量は日本の普通の100万キロワット級の原発1基で、紛50万トンにものぼるため、これをすべて放射性廃棄物とすれば、費用がかかりすぎるというのが「クリアラソスレベル」導入の理由である。
 具体的には、茨城県にある東海第一原発が、98年3月に運転を終了、15〜20年かけて解体作業を行うことになっている。政府の方針は、原発を解体撤去し、さらに新しい原発を建設するというもので、原発の敷地全体を一度「まっさら」にしようという計画である。
 原発の寿命は一般に30〜40年といわれており、2010年ころには、廃炉の原発が続々と出てくる。それまで に「クリアランスレベル」を導入して、電力会社の負担増を軽減しようという意図である。
 しかしただでさえ、日本中が廃棄物で埋めつくされかねない状況にあり、この中に「放射能で汚染された廃コソ クリートや廃材」が大量に紛れ込む恐れがある。おまけにこの廃コンクリートや廃鉄材の再利用が奨励されて おり、道路の基盤材に汚染コンクリートが使われる可能性もある。
 原発解体廃棄物への「クリアランスレベル」の導入は、放射能の具体的な測定方法、放射能の核種ごとの濃度基準と予想被曝量の整合性・妥当性など、多くの問題を含んでいる。これで放射性廃棄物が減るのではなく、至るところに「放射性廃棄物がゴロゴロ」状態が間近に迫ろうとしている。
 原子炉の廃炉方法は日本のような「解体撤去方式」だけではない。施設をそのままの状態で管理する「密閉 管理方式」、一部の設備を解体撤去し、原子炉など放射線の強い部分をコンクリートで遮蔽する「隔離遮蔽方式」などがある。危険な「解体撤去方式」を早急に見直す必要がある。



back to hobo page