#66 最新鋭原子炉ABWRの安全性及び東電の情報公開に疑問


燃料棒被覆管に孔が開くのは大変なことであるにもかかわらず、「炉水に漏れた放射能はほんのちょっと。 開いた孔も微小」と東電は状況をなるべく大したことではないように見せようとしている。「ピンホールだ。針で つついたような小さな孔だ」と平気をよそおっても、検査をする前から「ピンホール」という確証はない。
放射能が炉水に漏れたこともさることながら、別の大問題が発生する。原子炉を止めて炉が冷えると、開いた孔から水が被覆 管の中に侵入する。そのあとまた炉を運転再開すればどうなるか。炉の出力が突然上昇するような事故 (このような事故は浜岡でも起きていて、中性子束高という信号で緊急停止している)の際、水の侵入 した燃料棒(浸水燃料と呼ばれる)は水蒸気爆発を起こし、大暴走事故に発展してしまう。浸水燃料は それほど恐ろしいものだから、原子炉をすぐ停止しなければならない。
燃料棒のピンホール発生についての確率は100万本に1本で、これは諸外国の水準から見る と1桁から2桁良い数字とか言われている。しかし実際には、柏崎刈羽の燃料本数は5万本余りで、 運転開始から1年もたっていないわけだから、確率で言うのならば6.7倍ほど悪いことになってしまう。
実際には100万本に1本というのは、従来の7×7あるいは8×8集合体で燃焼度30000から38000MWD/tのもの についての話であり、新型9×9燃料体で最高燃焼度70000MWD/tなどというものについてはまだ実績もない。 (段階的に燃焼度を上げる計画で、いま話題にしている高燃焼度燃料は8×8タイプで目標燃焼度は50000MWD/t)
以前に浜岡原発でも燃料棒のクラッド表面剥離による燃料損傷事故を起こしており、新型燃料体はそれ以前のものに比べて 信頼性が落ちていると考えられるので、こういった燃料損傷は今後も起こる確率は高くなると考えられる。
 このような燃料体については、原子力産業側も「従来の燃料に比べて1桁から2桁健全性が悪くなることもあり得る。 諸外国と同程度の水準になるとしても、安全上問題にはならないが、従来よりも損傷しやすいということについて国民 の納得が得られるかどうかという問題がある、」という旨のことを言っている。
 その後新型燃料体の開発で従来の損傷率を上回らないような技術開発をしている可能性は否定しないが、それが現実に 実証されるためには相当程度の運転実績が必要であり、少なくとも新型燃料を100万 の数倍以上装架したうえでようや くできることであろう。1炉年100万キロワットで推定20000本の使用実績であるから(110万キロワットでは 764体の集合体で一体当たり62本の燃料棒を使い、平均的には2年あまり炉内滞在時間がある)、200炉年くらいの 実績をみないと本当の所はわからない。BWRの認可出力は2419.5万キロワット(柏崎刈羽 6号を含む)なので、 全部に高燃焼度燃料を装架したとしても、10.3年くらい経過しなければそれだけの実績にならない。
この炉は今のところ世界で唯一の商用改良型沸騰水炉(ABWR)で 、浜岡5号炉としてこの炉が建設される予定である。 中電は浜岡現地での説明会でこの炉の安全性を主張していたが、そのさなかに柏崎で事故がおこった。改良型沸騰水炉は 安全性を切り捨て経済性を追求した炉で、決して「改良した」炉ではない。
 アメリカを始めとして、世界のどこでも運転実績がなく、日本以外どこもつくろうとしていない改良型沸騰水炉。 運転してみれば試運転段階で信じられない事故を起こすのである。



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