#42 A氏のセミナー


  インターネット利用者の年収の平均は1000万円だそうです。都銀系、大手証券系で
なければ、いただけそうもない高額な年収です。大手証券系はパソコンなども会社で用
意してくれるそうです。所得が低い上、パソコンも自腹。そんな懐具合も寒い中、入場料
2万円という高額なセミナーに参加してきました。  

  世界的に著名なアナリストA氏のセミナーの要約です。

  マーケットは複雑であり、一言で説明することとは困難であり、マーケットの分析不足が
ボラティリティを生む。特に「なぜ、資本が移動するのか」という分析が欠けている。資
本移動はすべて人々の期待感から生ずる。一つの相関関係にこだわると見通しを誤る。例
えば金利と株式の相関関係は、1876年からのデータによれば、35%に満たない。現在、米国
30年国債が125から105に下落している。ボラティリティが高まっている。なぜ?
   
  インフレは存在するかどうかという点が最近議論となっている。実際は年率8%程度の
インフレである。政府の発表する統計は、GDPなど成長に関するものは、公共部門の数
字が含まれるが、CPIは民間のみの数字である。このおかしな状況にマーケットは気づ
いている。いまや経済統計の予測はルーレットゲームをしているようなものである。

  世界中の政府がバブル型天井を迎えつつある。大恐慌直前の政府のGDPに占めるウェ
ートは18%に過ぎなかったが、今や33〜40%に達している。米国政府の短期調達比
率は42%を超えたことはなかった。しかし、クリントン政権は70%を短期で調達して
いる。その3分の1が1年未満である。当時、短期金利は2.5%、長期金利は7.0%
であった。世界各国の首脳も短期シフトを誉め、追随した。その結果、利払いのウェイト
は11.5%に上昇した。深刻な金融危機到来は早まったのである。ヨーロッパ諸国の債
務不履行が近づき、米国のメディケアは来年赤字となる。現在の社会保障制度は、
2003年まで持たない。次期大統領がクリントンになれば、彼は民主党最後の大統領に
なる。なぜなら、民主党がなくなり、第3の政党が台頭するからである。既存の政府のバ
ブルがはじけ、効率的な政府が登場する。

  世界には危機が蔓延している。ロシアは2003年まで、前にも後にもいけず停滞が続
く。エリツィンは、権力を分散させすぎた。軍隊への給料も滞納となっている。イスラム
原理主義の台頭も大きな懸念である。トルコ、エジプトで勢力を拡大している。その思想
は2000年前に戻ろうというものである。サウジでも、国王が高齢なため、原理主義が
権力な座を狙っている。このような情勢を映して、原油価格は、$18から$25に高騰
している。ロシアの混乱の影響を最も受けるのはロシア債務の20%を引き受けたマルク
であり、ヨーロッパの単一通貨の悪影響を受けるのもマルク。ドイツからアメリカ、イギ
リス、スイスに資本が逃避している。非EMU通貨がマルクに対して強含んでいる。北朝
鮮には南進リスク、中国、ロシアにクーデターリスク。人口増加率>経済成長率であるた
め、失業率は上昇し、不確実性は高まっている。

  世界の資本投資の歴史を見ると、輸送株の高騰、商品市場の高騰、工業株の高騰と時代
時代で主役を変えてきた。日本の株式市場での次の主役は、インフレに強い企業ではない
か。例えば、商社や小売業など。

  米国の社会保障改革委員会は民主党5人、共和党5人の10名であるが、社会保障制度
の改革内容によっては、NYダウは$10000も有り得る。ダウのこの水準は政府債務
の拡大に比べれは、割高ではない。ドルの購買力に見合ったものである。実際ベースのイ
ンフレ率を勘案すれば、1966年の高値をやっと抜いたばかりである。

  グローバルな観点から資産価値を見なければならない。1980年と比べると何もかも
値上がりしている。しかし、商品は値上がりしていない。原油はインフレを考慮すれば、
$85が妥当な価格である。しかし、$24に過ぎない。商品の変動は株に比べると激し
い。商品は常に値下がりしていなければならないような偏見を受けており、長期的に売ら
れ過ぎである。そのため、短期間に急騰する。原油は$65になる。$22.5の抵抗線
の次は、$32まで抵抗線がない。しかし、日本経済がダメになる訳ではない。原油価格
が$240を超えない限り日本経済がダメになることはない。日本経済にはインフレ(物
が上がるという期待感)が必要である。金利を上げ下げする政治家は必要ない。日本はこ
の10年で大きく変わった。誰も政府を信用しなくなった。これは経済を変える需要なプ
ロセスである。

  エネルギー株、資源株に注目。

  対ドルで日本は壮大な上昇トレンドの中にいる。ドルは145円まで戻るが、これはト
レンド内の戻しの動きに過ぎない。ドルが160円を超えない限り、ドル高に転じたとは
言えない。年末の為替が107.55円を超えた場合、ドルはさらに上昇する。118円
の抵抗線を越えれば、145円迄上昇。年末の為替が107.55円以下ならば、ドルは
下落する。ポンドは欧州通貨の中で最も強力な通貨になる。特に、最も成長率が低く、税
率が最も高い、非常に社会主義的なマルクに対して強含む。ドイツマルクはポンドの4分
の1になる。ドイツでは、法律が労働者よりなため、雇用者は長期雇用契約ができない。
そのため失業率も上がっている。通貨のトレンドが変わる度にボラティリティは拡大して
きた。5%〜15%〜25%〜40%。これは政府への人々の信頼感の低下が要因である。

  インフレがないというのなら、国家債務増加率が600%にも達しているのはどういう
ことだ。

  ボラティリティは情報伝達が早まったから増しているのではない。今よりもボラティリ
ティが高い時期は過去にもあった。ボラティリティの要因は政府への信頼感の欠如による
ものである。政府の改革はウィルスのようなものだ。始めは、ニュージランドから始まっ
た。現在、世界でもっとも効率的な政府を擁している。これは、となりのオーストラリア
にも伝播している。そして、これは欧州、北米に広がっていくだろう。

  強気相場は期間が長い。弱気相場の期間は短く、特に最初の2年間に下落幅の9割方価
格低下する。

  日米だけが、ワールドワイドベースでの課税をされている。租税改革をしないと、日米
の多国籍企業は、他の国の企業に比べて競争力が低下する。このため、日米の企業は出資
比率を50%以下に抑え、現地企業などどパートナーシップを組み課税を逃れる。租税改
革と社会保障改革が行われ、社会保障制度の一部が効率の高い民間企業に委託されれば、
NYダウは$10000に達する。

  現在米国のダウはマネーサプライとの均衡状態(パリティ)にあり、抵抗線近辺にいる。
ダウが10月高値となれば、調整は穏やかなものとなり、高値は98年となる。ダウの高
値が来年の1〜2月であれば、調整はきつく、高値は2003年となる。

  商品は今後上昇期に。金価格は、IMFの売りでしばらく横ばいになる。(場合によっ
ては$340まで下がることも)。しかし2003年には$1000に達するだろう。来
年は、大統領選を控え財政赤字が粉飾されているため、それが剥げ落ちる来年、財政赤字
は劇的に増加する。

  ジョージソロスは香港ドルを攻撃しないといっているが、米ドルとの連動を維持するの
は不可能である。資本家は返還前に一度ドルに変えて様子を見るだろう。


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