Mail#28 TAX


 アナリストの重要な業務に、業績予想がある。
 売上の予想がある程度、固まってくると、営業利益、経常利益までは容易に 予想が出てくる。
 問題なのは、税引後利益である。特に悩ましいのは連結税引後利益である。 四季報を少し眺めてもらえばわかるが、会社によって、純利益と経常利益の比率が まちまちである。同じ会社でも期のよっても大きく変動する。 DDIの連結純利益が連結経常利益に対して低いのは、DDIポケットの赤字の 影響であることがだいたい予想がつくだろう。
では、TDKの連結純利益が連結経常利益に対して高いのは、なぜか。
実はこの手の会社が一番厄介である。これは、やはり取材を通じてしか、要因は つかみにくい。
TDKは、国際展開している会社であり、収益源であるMRヘッドの利益の一部を、 税率の低い香港子会社を計上しているからである。
国際展開している会社の税引き利益を予想するのは、その会社の所在地別の利益構成の 把握に加え、各国の税制や税率の知識が必要であり、難しい作業のひとつである。

移転価格税制という問題もある。例えば、A国にある海外子会社の生産品をB国の親会社が 買う時に、仕入価格を不当に安く押さえることで、親会社の利益を厚くしていたとする。
A国の海外子会社が第3者と取引した場合に想定される仕入価格と比較して、 親会社との取引が適正でないとA国の税務当局が判断すると、 適正な仕入価格だったならばA国にある海外子会社が得ていたであろう利益に対する 課税がなされる。つまり、B国の税金をA国に引っ張るのである。
これには、国家間の税務当局の力関係も作用する。移転価格税制にもっとも熱心なのはアメリカである。 これから、国内景気低迷を受けて、日本の税務当局による移転価格税制の適用例が増えるであろう。
実際、連結決算重視の時代においては、グループ間の取引価格によって利益のアロケーションを変動させることによって税率を低下させることで利益水準を高めることも考えなくてはならない。 しかし、その場合、日本の税務当局の方が力があるような国に利益を落としても、それが公正な取引でないとみなされた場合は、移転価格税制の適用を受け、追徴課税の憂き目にあう可能性もある。




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