★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ ★★★★  投資信託入門 その12  ★★★★ ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★  今回は前回の続きで、分配金と税制についてです。前回はオープン投信の分配金に ついて、解説いたしました。普通分配金と特別分配金の違いとその税制の取り扱いに ついて、ご理解いただけたでしょうか?今回はまず、オープン型投信の値上がり益に ついての税制について解説いたします。  何度か触れてはいますが、オープン型投信の税金は平均信託金と基準価額との差額 から、20%を差し引くことで計算され、税金を差し引いた基準価額を売買基準価額と いう形で新聞に発表されています。つまり、投資信託は無記名証券であり、受益証券 を引き出した場合、買付日や買付者などは特定できないのです。単位型投資信託であ れば、全て購入者は10,000円で購入しているはずですから、問題はありませんがオー プン型株式投資信託では、日々値動きする上、いつでも購入できるわけですから、受 益者それぞれによって買付単価は異なり、また、無記名証券であることから、税務署 が個々の受益者の買付代金を特定することは出来ないわけです。そこで、平均信託金 という制度が考え出されました。そのファンドの全ての購入者の平均買付代金を、個 々の受益者の買付代金と考えようと言うことなのです。そして基準価額から平均信託 金を差し引いた額を受益者の利益と考え、その20%を税金として徴収されるのです。  ですから、当然個々の受益者の購入単価とは違います。ある投資家が9,500円で購入 したとしても、平均信託金が9,000円であれば、9,000円を購入単価と考えて税金が差 し引かれるのです。しかし、逆の場合、即ちファンドの購入以後、価格が上昇し売却 益が出たとしても、それ以上に平均信託金が高ければ、税金は差し引かれないわけで す。  ファンド運営の仕組みとして、平均信託金は組み込まれておりますので、私は申告 して税金を支払いたいと行っても無理であります。当然、他の所得と合算することは 出来ません。一般的に、源泉分離課税は20%ですから、利益が上がっている場合には 他の所得と合算するよりは、別々の方が有利な方が多いとは思いますが、損して売却 する場合は別ですね。他の所得と合算して、利益を圧縮できればと考える方が多いの でしょう。その上、平均信託金という制度は非常にわかりにくく、また、基準価額へ 影響を与えるという意味でも、何らかの改善が必要だと考える人は多いと思います。 しかしながら、この改善には投資信託法だけではなく税法、もっと言ってしまえば、 国民総背番号制の導入など、税金徴収のシステムを根本から変えていかないと実行は 不可能であります。投信の規制緩和という小手先での対応では無理であり、税金体系 全体を検討する中で、改善が進むことと思います。  次に単位型投資信託の分配金と税金についてです。まず、単位型投資信託の分配金 について、解説しましょう。分配金をいくら出すかは、ファンドマネージャーや運用 会社が、分配を出す時期に勝手に決められるわけではありません。分配金の出せる額 には制限があるのです。しかし逆に全く出さないと言うこともなかなか出来ません。 分配金拠出可能額というのは、ファンドの約款で示されているのです。受益証券説明 書にも多くの場合は記載されています。その計算方法はファンドによって違いますの で、一概には言えません。配当等収益から、信託報酬等のファンドにかかるコストを 差し引いたものが最低でも分配金救出可能額として計算される場合が多いと思います。 つまり、基準価額が元本を割っていたとしても、配当等収益や利子収入が全くないと 言うことは、ほとんどありません。ですから、基準価額が元本を割っていたとしても、 分配金救出可能額は計算され、その範囲内で分配金を出すことが求められるのです。 受益者にとっては、損しているのに、分配金が払われることで、税金を払わなければ ならないというのは、不愉快だと考える方もいるでしょう。しかし考えてみて下さい。 株式を購入した場合には、時価が買付価格を下回っていても、配当金には税金がかか ります。これと同じですね。その上、ファンドで得た配当収入や利子収入を分配金と して払い出さないで、ファンドに留保しておくことは、税金繰り延べと税務署から見 られる可能性すらあるのです。  次に単位型ファンドの売買益にかかる税金ですが、これはオープン型株式投信と違 い簡単です。受益者は全て、10,000円又は元本で購入していることが分かっておりま すので、これを超える額の20%が源泉税として差し引かれ、受益者に支払われます。 ですから、元本を下回る場合には、税金は差し引かれません。オープン型株式投信の ように、損しているのに税金を取られると言うことは全くないわけです。しかしなが ら、これも、その損失を他の所得と合算する事は出来ません。  ちなみに、ファンドの売買にかかる税金として、今までは所得税を解説してきまし たが、この他にも税金があります。普通はファンドを売却するときに解約請求を行い、 ファンドから資金が流出する形で、換金をするわけですが、買い取り請求という方法 もあります。これはファンドから資金は流出せずに、証券会社が受益者の受益証券を 買い取る形の換金方法です。この場合は上記の税金以外に、有価証券取引税というの が徴収されます。ですから、この換金方法を採る方はほとんどいません。  ところで、今までオープン型投信と言わずに、オープン型株式投信と表現してきた ことに皆様お気づきでしょうか?オープン型株式投信には平均信託金という概念があ るのですが、オープン型債券投資信託(MMF、中国Fなど)は平均信託金という形で 税金は計算されません。あくまでも元本を上回る額の20%が税金として徴収されます。 ですから、元本を割ると、資金の募集が出来なくなるのです。  今回はこの辺で終わりとしましょう。