★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ ★★★★  投資信託入門 番外編  ★★★★ ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ 市場の効率性、または市場は効率的である(または効率的でない)という 言葉は良く使われますが、どうも誤解のある方もいらっしゃるようです。 効率的と言う言葉を一般的な言葉と捉えてイメージがわきやすいことも その要因かと思いますけれども、証券分析における市場の効率性という事 について、簡単にまとめてみます。 効率的であるという事は、既存の(既知の)事柄について、全て株価に 織り込まれているという事であります。 そして、既知の事柄としてどこまでを考えるかで、3つのタイプに分けられます。 1.ウィーク型・・・過去の株価の動きは全て、現在の株価に織り込まれている。   つまり、チャート分析は無意味であるという事です。「ウオール街のランダム   ウオーク」では、コイン投げによってチャートを書きチャーチストに見せたと   ころ、その銘柄は今すぐ買いだ、銘柄を教えてくれと言われた。と言う笑い話   が載っていました。みなさんもパソコンで乱数を発生させ、チャートを書いて   みましょう。株価チャートのようなものがすぐに書けます。 2.セミ・ストロング型・・・過去の財務諸表は株価に全て織り込まれている。   つまり、バランスシートや損益計算書を分析しても無駄だということです。   この理論によるとPERが低いのは低い理由があるためで、PERが低かろうが   PBRが低かろうが、それによる投資をしてもめざましい結果は得られないと   しています。 3.ストロング型・・・1、2に加え、インサイダー情報すら株価に織り込まれて   いるので、インサイダー情報を集めるのに躍起になっても、無駄であるとい   う事です。 で、これらの市場が効率的であるという事に対する反証がアノマリーであります。 アノマリーを直訳すると「変則、例外」となりますが、要は一定の規則に従った 投資でそれなりのリターンを得られることを指します。米国では低PER効果、1月 効果、小型株効果等が上げられるでしょう。低PER効果というのはPER(Price Earning Ratio つまり株価を一株当たり利益で割ったもの)が低い銘柄に投資することで、 インデックス以上のリターンが上げられると言うことです。小型株効果というは、 大型株に比べ小型株の方がパフォーマンスがよいと言うことであり、1月効果という のは、米国の場合12月が決算で、評価損となっている銘柄については売却することで 課税所得を相殺できることから、12月には小型株のパフォーマンスが悪く、その反動 から1月のパフォーマンスは良くなると言うものです。ただいずれのアノマリーに関 しても、効果は見られるものの、では実際にそのような運用をした場合に、売買手数 料を考慮しても効果があるかどうかに関しては疑問がもたれています。 つまり、投資信託において、低PERファンドを作ったとしても、恒常的にインデック スを上回れるわけではないと言うことです。 日本の場合PERに関しては、過去の検証をすると確かにインデックスを上回る効果が 現れております。しかしながら、過去の検証をする場合には既にその期のEPSが 分かっているため、将来のEPSが分からなければ、この恩恵を受けることは出来ず、 実際、過去のPERをその時点での予想EPSを元に計算すると、インデックスを上回る パフォーマンスは必ずしも得られないと言うことのようです。 ここで、投資信託との対比において市場の効率性を考えてみましょう。 1.のチャート分析に関しては、公にチャート分析によってファンドを運用すると、 唱っているファンドはありません。(と、思います。)しかしながら、運用手法の中 で株価水準に考慮するといった表現を取っているファンドは多々ありますので、 全く1の効率性を肯定しているわけではありません。また、低位株ファンドのよう に、株価のみを投資銘柄として選定基準に挙げているファンドなどは、ウィーク型を 根本から否定しているという事になります。低位株のパフォーマンスについては、 過去私も検証したことがありますが、この運用スタイルを成功させるためには、 銘柄入れ替えが必須であります。つまり、その時点で低位の銘柄に投資して、 長期投資を行うのではなく、一定期間毎に低位の銘柄に入れ替えることで、 大きなリターンを得ることが出来るのです。ただし、相場の下落局面での値下がり もダブル型と同じ位急激ですから、投資の際には十分にその辺りを留意された方が 宜しいかと思います。 次に、2.のセミ・ストロング型ですが、基本的にファンドマネージャーによる アクティブ型のファンドは市場が非効率的であることが前提です。市場が非効率的で あるからこそ、専門家が分析することでより大きなリターンを得られるはずである。 という考えに基づいて、アクティブ型のファンドは設定されています。また、 低PERファンド等の一定の基準に従って投資対象銘柄を選定するファンドも これに該当するでしょう。 3.のストロング型に関してはこれを否定する形でのファンドは設定されていません。 というよりも、インサイダー情報によって投資するというファンドなど設定が無理で すから、議論の余地はありませんね。 ということで、投資信託は、市場が非効率的であることが前提で様々なファンドが 設定されているわけですが、市場の効率性を肯定する方々には、インデックスファン ドを用意していると言ったところでしょうか。で、純資産の動向を見ていると、 圧倒的にインデックスファンドの資産が多いわけで、これを単純に解釈すると、 運用会社は、市場を非効率的と見ているが投資家は市場を効率的に見ているとい った結論にでもなるのでしょうか。 実際には市場を非効率的に見ているけれども、アクティブ型は信用おけないの(良く 分からない?)で、インデックスファンドを利用して売買することでより大きなリタ ーンを得ようと言うことなのでしょうけれども。(^^ゞ で、次にファンダメンタル分析についてですが、ファンダメンタルという場合に 大きく二つに分かれるのではないでしょうか。つまり、現在分かっているファンダ メンタルを分析するのかという事と、将来のファンダメンタルを分析するのかと言う ことです。効率的市場仮説において前者は明らかに、セミ・ストロング型で 否定しているわけですが、後者に関してはその限りではありません。(実は後者を ファンダメンタル分析と言うかどうかについては正確には疑問なのですが、ま、 意味は通るでしょう。(^^ゞ)つまり、ファンダメンタル分析という場合に、既知の 数字ではなく、後者で説明したような将来の業績や経済動向を考える場合には市場の 効率性と矛盾はしない、逆に市場が効率的である方が、ファンダメンタル派にとっては 収益を挙げるチャンスは広がると言うことです。 つまり、将来の経済変動や、会社の業績の変動を確実に予測できるのであれば、 このファンダメンタルを元に投資して十分効果があるという事です。では、果た して、そのようなことが可能なのでしょうか?(別に否定しているわけではなく、 そのような予測が可能なときにのみ投資すれば良いとは思いますが。) ここから先は私の個人的見解ですが、米国の場合市場の効率性は比較的高く、 市場のコンセンサス通りだと株価は変動せず、コンセンサスを上回っていると 買われ、下回っていると売られます。つまり、該当会社の業績について、 良くなるとか悪くなるではなく、コンセンサスより良いか、コンセンサスより 悪いと予測する場合に投資する価値が出てくると言うことです。で、ここでいう コンセンサスというのはたいていの場合IBES(アイベスと読む)等の各証券会社の リサーチ部門の予測数字を集計する会社の数字が使われます。しかしながら、 日本の場合、コンセンサスよりも良い業績を発表しても、折り込み済みとか言わ れて売られることがままありますねぇ。コンセンサス自体も曖昧なのですが、 トレンド重視で、その会社の業績がよいというだけで、株価水準を考慮せずに 買い上がるので、この様な結果になるのでしょう。つまり、株価が割高になれば いくら業績が良くても売られるわけで、こういった意味から、日本の場合、 市場の効率性は低いと言うことが言えるのではないでしょうか。