★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ ★★★★  投資信託入門 その8  ★★★★ ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ 今回は分散投資についてお話ししましょう。投資信託の解説書等を読むと 大抵は、「大きなかごに沢山の卵をまとめて盛っておくと、万一そのかご を落としてしまったら卵は全部割れてしまうかもしれません。小さなかご に少しずつ盛れば、全部を失うことはまずないでしょう。」と言うような 表現がなされています。でも、この表現は少々誤解のある表現だと思うの ですよ。相関係数と前回解説した標準偏差を使えば、分散投資によって、 同じリターンを得るのに、より小さいリスクで可能になることが証明でき るのですが、ここでは、そんな説明を省き直感的な説明で進めていくこと にします。 ただ単にたくさんの銘柄に投資することを分散投資とは言いません。例え ば、東京電力、関西電力、中部電力、東北電力、北陸電力・・・と、上場 電力会社10社に投資することは分散投資と言うのでしょうか?投資信託の 中には、そのようなファンドも存在しますが、これは、分散投資のメリッ トを享受しようと言うファンドではありませんね。では、逆に日立を買っ て、同株数を信用取引で売り立てることを分散投資と言うでしょうか?つ まり、分散投資というのは「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる」という意味で は無いし、全く正反対に動くものを買うことでもないのです。 分散投資を、私は、「平均点を取るための手段」と、定義づけます。           ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^ (1)今、株が買いだと考えたとしましょう。その際に、日立を買う人もいる かもしれませんし、東京電力を買う人もいるかもしれません。新日鐵を買う 人だっているでしょう。1年経ったとき、日経平均は、もくろみ通り上昇 したとしても、日立が上昇しているかどうかは分かりません。新日鐵は上 昇しているかもしれませんが、東京電力が下落しているかもしれません。 そこで、株が買いだと考えた人にとっては、株全体の動きを反映してくれ るものがあればよいわけです。 (2)「今、株が買いだ」と思わなくても良いのです。ソフトバンクは将来絶 対に今よりもずっと大きな会社になるはずだ。その結果、ソフトバンクの株 も将来的には上昇するだろうと考えたとしましょう。その人にとっては、日 々の200円高、100円安は関係ないのです。そうすると、いっぺんに買いたい 株数を買うよりは、3分の1とか5分の1、10分の1に資金を分けて、定期 的に買い付けた方が、より確実にソフトバンクの株価上昇を利益として、 享受できるでしょう。 (1)が銘柄分散、(2)が時間分散の発想です。そして、投資信託は(1)の銘柄分 散に力を発揮しますが、(2)は難しいですね。 ところで、「今、株が買いだ!」または、「この銘柄は買いだ!」と分かる んだったら苦労はないよという人が多いのかもしれません。 株って、基本的に金利よりも有利な商品なんです。ピーター・リンチの本を 読むと株が有利だと言うことを色々な確度から説明していますが、私もまた 違った確度から考察してみましょう。 企業は、普通、借金して事業を行います。中には無借金企業もありますが、 大抵は、負債があります。負債と自己資本を併せて、企業の資産となり、こ れを元手に事業を行うのが企業です。そうすると、借金の金利より、利益率 の低い事業を企業は行うのでしょうか?否だと思いますよ。ま、実際には、 借金の金利より、事業の利益率が低くても雇用維持などの目的から、事業を 続けざるを得ない企業もあるかとは思いますが、原則的、合理的な判断の出 来る経営者ならば、借金の金利より事業の利益率が高いからこそ、借金して 事業を行うのですよね。(一時的にはその逆になってたとしても!)そうする と、株ってのは、その事業の利益が反映するものだと考えると、当然、金利 よりも有利になると思いませんか? そこで、過去のデータをちらっと見てみましょう。1980年から1996年までの 月毎の企業利潤率と全銀貸出約定金利を比較します。 企業利潤率>全銀貸出約定金利 となった時期は 1980.1月〜1980.4月 1984.9月〜1985.6月 1986.6月〜1990.2月 1995.5月〜1996.6月 データが1996.6までしか手元になかったので、これ以           降、逆転したという意味ではありません。 1980年代は総じて事業利益率の方が高かったわけですが、バブル崩壊と時を 同じくして、貸出約定金利の方が事業利益率を上回ることとなりました。こ れが逆転したのは1995年5月です。確か、今回の上昇相場の起点は1995年の 6月末or7月始めですよね。(^_-) 株が基本的に金利より有利、銀行金利より有利だと考えたのなら、後は簡単! 上手くやろうとするから悩むのであって、平均点を取ればよいのです。株は 金利より有利なのだから、株式の平均点を取れば結果的に、金利よりも有利 になるではないですか!そのためには分散投資です。銘柄分散と時間分散。 この二つを実行すれば株式の平均点は取れます。つまり、よく分散されたフ ァンドを定期的に購入するというのが個人の資産運用にとっては一番良い方 法となるのです。 ここまで解説すると、気がついた方がいるかもしれません。よく「株式投信 は儲からない。株の方がずっと良い。」とおっしゃる方がいますが、もとも と、競争の対象ではないのです。株と株式投信を比較するのではなく、株式 投信は銀行預金などの金利商品との比較、又は債券との比較なのです。これ らに比べてリスクがある分だけ、リターンは高いということです。ただし、 平均点を取ればと言うことですね。一本一本のファンドを比較すると、バブ ル期に設定したものなどは、悲惨な基準価額となっています。でも、昔から 毎月、または、毎回(ボーナス時期毎に)購入した人にとっては、それなりに 金利よりも良い貯蓄手段となっていたはずです。今までのトータルの平均点 をとったとしてもです。基準価額が上昇したものはすぐに売却し、損したも のだけずるずると保有していたのでなければ・・。 ここで、分散投資(銘柄分散)とリスクとの関係をもう一度確認してみましょ う。リスクとは標準偏差、つまり、「期待値からのぶれ」だと説明しました。 分散投資とは平均点を取るためのものだとするならば、平均点=期待値(随分 強引のように思えますが、元々期待値と言っても、私は15%が欲しいから15% が期待値!と決めるものではありませんの。株式に関して言うと株式全体の 上昇率が株式に投資する際の期待値と見るのです。)ですから、分散投資とい うのは株式への投資に関して、リスクは非常に小さいと言うことになってし まうのです。言い換えると、分散投資はリスクを小さくするものと言われま すが、これは、株全体を買うことのリスクではなく、個別銘柄に投資するこ とのリスクを抑えているのです。(ちょっと難解な表現になってしまいまし た。(^^ゞ) つまり、分散投資(銘柄分散)をすることで、日立は上昇したけれども東京電 力は下落したと言うリスクを抑えたことにはなるけれども株全体が、上昇ま たは下落するというリスクを減少させたわけではないのです。このリスクを 減少させるためには、時間分散をさせるしかありません。 今までの説明で個別銘柄のリスクと株全体のリスクという話をしましたが、 株全体のリスクを『マーケットリスク』と言います。個別銘柄のリスクを『 アンシステマティックリスク』と言いますが、これは呼びにくい。ここでは 『個別リスク』で、代替させます。 そうすると、これをお読みの方の中には「はは〜、次はあの話を持ち出すの だな。」と察する方もいると思います。その通り!ですが、その話は次回の 話としましょう。