★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ ★★★★  投資信託入門 その7  ★★★★ ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ 今回はリスクについてお話ししましょう。リスクって何なんでしょう?損す ることかな?とも思いますが、『リスクのないところにリターンはない』と も言います。為替のリスクとか、信用リスクなんて言葉も聞きますね。 リスクの概念はいろいろありますが、投資を考える場合には『期待値から のぶれ』と考えるのが一番良さそうです。将来のことは誰も分かりません。 もし将来のことが分かり、この株は、絶対に10%上昇するというのであれば、 株式投資にもリスクなんてありません。10%の上昇を期待していたとしても 15%になるかもしれないし、▲10%になるかもしれません。ふたを開けてみ なければ分かりませんね。 逆の場合を考えましょう。低金利が長く続いていますが、ここで、確実に 年利10%でまわる証券があるとしましょう。抵当証券でも国債でもなんでも 良いです。とにかく、年利10%なんです。で、あなたが5%で借入が出来る としましょう。あなたはどういう行動を取るでしょうか?多分5%で借入を 行い、10%でまわそうとするでしょう。リスクがないとしたら、とにかく借 金をしまくって、その確実な投資先で運用すればよいのです。この行動は 無限に続きます。つまり、確実に有利な運用先などあり得ないのですよ。 しかしながら、バブル時代には、これを勘違いした人達がたくさんいました。 CBという、金利のかかる調達手段で資金を集め、ファントラ、特金等に、 確実に7%(?)で回りまっせ、との言葉で資金を投入し続けたのです。 その結果は、言うまでもありません。 しかし、株式なら一年間で50%の上昇や50%の下落というのもあるかもしれ ませんが、債券が50%も上昇したり、50%も下落すると言うことはまず、 あり得ないでしょう。(ヤオハンのCBは40円という値段が付きましたけどね。) イメージ的には、債券の方が株式よりもリスクが低いと言うことは言えそう です。株式と債券ならイメージでリスクの高い低いを見分けられますが、 一銘柄への投資と、10銘柄への投資ではどうでしょうか?そこで、リスクを 数値化する必要がありそうです。 リスクは『期待値からのぶれ』と表現しました。これを、そのまま、計算式 にしてみましょう。期待値からのぶれ=パフォーマンス−期待値、これで じゅうぶんなのですが、差額がプラスになる場合とマイナスになる場合があり ますので、それらを全部足すと、ゼロになってしまうかもしれませんね。そ こで、(パフォーマンス−期待値)の二乗にすると、マイナスはなくなります。 二乗にしたまま、平均値を計算したものが分散と言い、その平均値の平方根 (浮フこと)を計算したものが標準偏差です。この標準偏差のことをリスクと 言います。正確に数式をあらわしてもあまり意味がありませんので、標準偏 差のことを、リスクと言い、これは、期待値からのぶれを統計処理したものだと 考えて下さい。標準偏差のことをδ(シグマ)と表すこともあります。 期待値が10%、標準偏差が15%だとしたら、これは、10%の期待値(%)±15% つまり-5%〜25%のパフォーマンスが三回に二回の割合で達成することが出来 るという意味です。60本のファンドがあったら、そのうちの40本が-5%〜25%の パフォーマンスとなると言う意味です。 みなさん、リスクを±したのにお気づきでしょうか?つまり、リスクが大きく なるほど、下げ余地も大きくなるけれども、上昇の可能性も大きくなるわけで すね。リスクが小さければ、上昇の期待も小さくなります。 これで、リスクを数値化することが出来ましたので、過去の日経平均で 標準偏差を求めてみましょう。 私の手元に1949年5月以降の日経平均の月次データがありますので、これを 使って平均値と標準偏差を求めてみます。一ヶ月、一年、三年、五年間の 騰落率を年利に直して(単利)比較してみました。(要は、信託期間が一ヶ月、 一年、三年、五年のインデックスファンドを作り、1949年5月以降、毎月設定 していったとしたら、それぞれの信託期間のファンドが、どのようなパフォー マンスになったかということです。)データは昨年の12月末の数字まで利用して おります。 期間    一ヶ月  一年   三年   五年 平均値   12.0%  14.3%  17.1%  18.4% 標準偏差  70.9%  25.7%  20.9%  17.6% データ数   571個   560個   536個   512個 最大値   310.4%  141.5%  131.1%  63.5% 最小値  ▲260.3% ▲46.6% ▲18.8% ▲10.9% 期間が長い方が、平均値は高く、標準偏差は低いことが分かります。さて賢 明な投資家ならば、平均値が低くて標準偏差が高いファンド(信託期間の短い もの)と、平均値が高く標準偏差の低いファンド(信託期間の長いもの)のどち らを選択するでしょうか? さて、ここで、相場観というものは全く考慮されておりません。相場観を全く 働かせなくても。1949年以降、毎月、信託期間五年のインデックスファンド (手数料、信託報酬が全くかからないと仮定)を購入したとすると、昨年末までの パフォーマンスは平均18.4%となるんです。 長期投資がリスクが小さいというのは、このことを言っているんです。ですから、 逆に私は相場を当てることが出来る、また、相場観で売買するのが楽しいと いう方に長期投資を進めるつもりはありません。また、日本の株式市場は今後 当面はもみ合いに終始するという相場観を持つのであれば、やはり、生真面目に 長期投資を進めるつもりはありません。その相場観が当たるのであればですね。 あくまでも、こう行ったリスクの計算は統計的手法に頼っていますので、そこに 相場観は挟まれておりませんし、逆に挟んでは行けないのです。 さて、リスクの次は、そのリスクを低減させる効果のある分散投資についての 解説をしなければなりません。次回は分散投資とは何ぞやと言った点について 解説を試みたいと思います。