★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ ★★★★  投資信託入門 その4  ★★★★ ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ 以前、株式投資信託については、  @安定型(株式の組入比率50%以下)、  A安定成長型(株式の組入比率70%未満)、  B成長型(株式の組入比率の制限無し→と言っても、当時は株式先物の利用は、   ヘッジ機能に限定されていたので、100%以上の組入れは、事実上不可能。   つまり、制限無しとは株式の組入比率は100%以下という意味) というように、分類されていたのですが、株式投資信託のみに利用されるもので あったことや、リスクとリターンの関係がわかりにくいとの問題点を解決するた めにRR(Risk リスク と Return リターン)1〜5の5分類に全ての投資信 託を分類し、この分類によって商品のリスク度合いと期待できるリターンの関係 を表示するようになりました。個人的には更に分かりにくくなったのではないか と思ったりもしますが、まずはこれらの概念を理解していただいた上で投信のリ スクとは何かと言った問題、更には、投資に関するリスクとはと言った問題につ いて、何らかの理解を持っていただければと思います。 (1)RR1・・安定重視型→安定した利回り目標として、値動きの少ない証券    で運用するファンドですが元本が保証されている訳ではありません。    具体的には中国ファンド、MMF等がここに分類されます。  受益証券説明書には大抵、上のような記述がなされていると思いますがここで、  元本保証と、元本確保または元本の安全性について考えてみましょう。大抵の  方は元本保証というと安心しますが、本当に元本保証は安全なのでしょうか?  元本保証というのは、そのファンドの安全性とは全く別に第三者が、何かあった  ときには、元本分を拠出すると言うことです。その第三者が、拠出する能力が  無くなった時点で、元本のリスクは劇的に増大するわけです。現在問題になっ  ている建設会社の債務補償問題はその典型です。貸す方は上場会社の保証が  あれば、大丈夫と思ったかもしれませんが、その保証する会社が経営難に陥れば  貸したお金は、全然安全ではなかったという事になります。銀行預金も同じ事で  す。銀行が経営能力を失った時点で元本の安全性には?マークがつくことになり  ます。ただし、銀行預金の場合は預金保険という物がありますから、一定額の  元本までは保証されておりますけど・・・。ただこれも、預金保険の資金が底を  ついた場合にどうするのかについては、まだ議論の結果が出ておりませんね。  では元本確保型の商品を作った場合はどうか。例えば、2年間のクローズド型の  商品を作り、資金を全て残存期間2年未満の国債を購入することとします。  そして、受け取った利子のみ株式のオプションを買うとしましょう。このファン  ドの元本の安全性はどうでしょうか。信託期間中を考えるならば、債券は値動き  しますから、元本を割れる可能性は大きいですが、償還時には確実に元本を  上回っていることでしょう。国債のディフォルトがない限り・・。つまり、  資金の出入りがなければ、元本確保型の商品は色々な確度で作ることは可能なの  です。では、その元本確保型の商品と、元本保証した商品、どちらが安全だと思  いますか?答は明白なのではないでしょうか。  中国ファンドについては計理上のしくみもあり、元本を割れることは先ず無いと  考えて宜しいと思います。つまり、購入債券は債券の償還時まで保有すれば、そ  れなりの利回りを確実にはじき出せるわけです。で、計理の仕方も、そのような  運用を前提になされておりますので、日々の債券の値動きに左右されない分配が  可能になっているわけです。ですから、安定的な資金の流れさえ確保できれば、  元本を割るリスクはほとんどないのです。可能性としては、急激な金利上昇時に  解約が殺到した場合です。要するに購入した債券が購入時よりやすくなっている  時点で、売却しなければならなくなったときはその限りではありません。  MMFに関しては中国ファンドのような計理方法は採っておりませんが、投資有  価証券のほとんどは短期金融商品(CD、CP、コールローン等、投資の際には  レーティングなどを考慮した上で投資しておりますので、ディフォルトのリスク  も低い考えて良いでしょう。)ですから、投資しした、CPがディフォルトに  なった等の事がない限り、元本の安全性は非常に高いと言えます。  つまり、元本保証ではないと言うことと、元本が割れる可能性があるという事は  イコールではないと言うことです。  よく、債券の含み損のことが話題になりますが、その損が出ている状況で売却し  ない限り、ファンドの安全性に関しては、問題ないと考えて良いのではないでし  ょうか。数年前に米国で、MMFの元本割れが問題になりました。より高い利回  りを狙って派生商品を多用していたファンドで、その資産内容に問題が見つかり  投資信託会社が、その損失を埋めたのです。日本の投信会社のMMFでは、その  ようなリスクを取っている物はないと思います。(多分・・・。全部のファンドの  資産内容を把握しているわけではないので、断言は出来ません。)また、日本でも  MMFに関しては将来何らかのアクシデントがあった場合には、米国と同様な方  法が取られるのではないかと、個人的には推測しております。将来的にはMMF  に決済機能を持たせることで資金の取り込みを図っていくことが予想されますから  それくらいの覚悟を持って、業際問題に取り組んでいくのではないでしょうか。  個人的な推測に基づいて書いている部分に関しては、その表現方法を十分に  考慮しておりますが、誤解のないよう、宜しくお願いいたします。m(__)m (2)RR2・・利回り追求型→利回り向上を目標として、公社債中心に運用す    るファンドですが、値下がりのリスクもあります。具体的には、長期国債    ファンド(通称トップ)等がここに分類されます。  運用する側は、元本を意識した運用をとっておりますが、債券は日々値動きしま  すし、資金の流出もある中では、債券相場の成りゆき次第では、元本を割ること  も十分考えられる商品です。しかしながら、株式投資信託のように、5,000円とか  6,000円になることはないでしょう。(多分です) トップに関しては各社ファンド  名は同じですが、運用方針は若干異なるようです。随分古くから存在する商品で  すので、過去のパフォーマンスを各社で比較をして、購入を検討するのが宜しい  のではないでしょうか。 (3)RR3・・値上がり益・利回り追求型→値上がり追求。利回り向上を目標    として株式と公社債等の組合せにより運用するファンドですが、値上がり    益を追求するための値下がりのリスクがあります。(公社債を中心に運用す    るファンドで、基準価額変動要因の大きいものを含みます。)具体的には    LLF(大蔵省の肝いりでスタートしたファンドでしたが、その後パッと    しませんね。4年目に分配金を支払わなくても良いというのが一番のメリ    ットだったのですが、個人投資家にはあまり関係なさそうです。)や定時    定型ファンドの国債型等がここに分類されます。  昔は、安定型、安定成長型と言われていた商品がほとんどです。88年89年に設定  された商品の中には、ここに分類されている商品でも7,000円程度の基準価額にな  ってしまったファンドが多々あります。その程度のリスクは十分に認識して購入  すべきでしょう。  個人的には、株式の組入れ上限だけを50%とか70%に引き下げたような商品を購  入すべきではないと思います。それならば、資金の半分を株式100%の商品に、  残り半分の資金を中国ファンド、またはMMFに振り向けた方が効率的です。な  ぜならば、株式の組入比率は常にその時点で計算するからです。例を用いて解説  します株式に50%、残りの資金を短期金融商品で運用したとしましょう。計算の  簡便上、短期金融商品の金利はゼロとします。1年後に株式が半値になったとし  ます。基準価額10,000円で始まったファンドはいくらになるでしょうか?単純に  計算しますと、10,000円のうち、5,000円分は短期金融商品ですから、値動きなし  で5,000円のまま、のこりの5,000円は株式に投資して半分になったのですから、  2,500円。あわせて、5,000円+2,500円=7,500円と考えるでしょう。しかし、実  際には、それより、下になるでしょう。なぜなら、基準価額が7,500円になったと  きの株式の組入比率を考えてみて下さい。2,500÷7,500円×100=33.333・・・で、  33.3%なのです。運用経過中の組入比率も50%を維持したとすると、どんどん、  短期金融商品の方に振り向けた5,000円分を食っていくことになりますから、7,5  00円を下回ることになります。  転換社債型の商品も特に終利銘柄を中心に購入するファンドの場合、わざわざ  ファンドにしなくても直接額面割れの転換社債を購入した方が、手数料や信託報  酬を取られない分だけ有利であると考えられてきました。しかし、これは今後変  わるでしょう。今回ヤオハンの転換社債の3回が40円まで売り込まれました。  つまりこれは、マーケットがディフォルトを心配したわけですね。今までは、  転換社債のディフォルトがあり得ない、銀行が何とかすると考えられてきました  が、これからはそういう訳には行かない。そうすると、投資信託の分散投資とい  うのは、それなりの威力を発揮する事になると思います。米国では債券のマーケ  ットの奥行きが深く、地方債や社債、そして、モーゲージ債などがその返済リス  ク(ディフォルトリスク)との見合いで、残存期間が同じ、利率が同じでも様々な  値段で売買されています。日本では、ディフォルトと言うことはほとんど考えら  れなかったので、どこの債券もほとんど同じ利回りで売買されてきました。とい  うよりも、問題のある会社は、元々債券を発行できなかったのです。しかしなが  ら、今後は違います。現在でも、金融債ではその発行体の返済能力の違いで、  違う利回りで売買されるようになってきたのです。今後、債券の種類も豊富になっ  てくるでしょうし、その中で、返済能力に問題のある会社も利率を引き上げれば  債券を発行するようになるでしょう。そうすると投資信託の分散投資は相当な威  力を発揮することになります。そうなれば、ここに分類される商品も種類が豊富  になるでしょうし、中には相当なリターンを得られる商品も現れることでしょう。 随分と長くなりましたので、RR4、RR5に関しては、次回に続けるとしましょう。 債券のディフォルトリスクについてももう少し、ふれてみたいと思います。