日経経済新聞 11月6日付け


ローン組み入れ高利回り投信


メリルリンチ証券


国内初 個人向け販売


 メリルリンチ証券は、変動利付きの企業向けローンを組み入れた高利回りドル建て投信の販売に乗り出す。集めた資金の約三五%を米国のローンで運用するもので、ローンを組み入れた投信は日本では初めて。日本の個人が投信を通じて資金をローンで運用できるようになり、主に銀行を介していた個人資金のローンヘの流れが多様化することになる。

 新投信は米メリルリンチ・アセット・マネージメントが運用し、対象は米国の高利回り外債を中心とし、三五%程度は変動利付きの担保付きローンを組み入れる予定。変動利付きローンを対象とするため、金利変動のリスクを受けにくい。

 メリルが昨年十一月に認定し海外で販売している同様の投信では、設定以来の利回りが年率で一一%を越えている。毎月決算をして投資家に分配金を支払う仕組みで、為替変動リスクや投資対象企業のデフォルトリスクはあるが高い利回りが見込めるため、個人の富裕投資家層を主要な対象とする。販売するのはメリルリンチ証券のほか、安藤証券、岡三証券、極東証券、新日本証券。募集期間は二十一日から十二月十一日までで十二月十二日に設定する。申し込みは最低千米jから。

 メリルグループでは、メリルリンチ投資顧問が現在投信の免許を申請中。銀行の投信窓販の開始や外為法の改正で、グループとして投信ビジネスの強化に乗り出している。

米企業ローン投資に道


解説 メリルリンチ証券が今回販売する投信は、最近日本での販売が急速に増えてきた外国籍のハイ・イールド・ボンド(高利回り債)投信の一種だが、最大の特徴は、投資対象に企業向けのローンを組み入れる点にある。これにより、一般の個人投資家が投信を通じて米国の企業ローンに投資できるパイプが開かれたことになる。

 ビッグバンでは、千二百兆円もの個人金融資産をいかに有効に活用するかが重要なテーマとなっており、こうした動きが広がれば、個人マネーの流れが大きく変わる可能性を秘めている。それとともに主に銀行が担っていた個人資金とローンの仲介機能を投信が担えるようになるわけで、銀行の地位低下につながりかねない。

 九四年十二月の規制緩和により、外国投信の投資対象に五〇%を上限として非有価証券を組み入れ可能なことが明示された。今回のファンドで投資対象とする企業は債券でいえは格付けBB格以下の″ジャンクボンド"発行企業。利息も高いが、変動利付きであるために、一般の債券ファンドに比べ金利上昇期にも好成績を維持することが可能だ。担保付き銀行ロ−ンは企業倒産時の弁済順位が債券より上位で、回収可能性が高い利点もある。

 日米の差は人きい。高利回り債市場一つとっても、日本では流通市場はおろか発行もほとんどないのが現状。銀行が企業向け債権の流動化にようやく乗り出したとはいえ、企業ローンの流通市場など望むべくもない。高利回り供債や倒産企業の発行債券、企業向けローンですら流通市場が発達している米国で運用するからこそ可能な商品である。日本の投信では、デリバティブ(金側派生商品)を積極的に活用するタイプの投信が増えているほか、未公開株への投資がようやく可能になった段階だ。  (証券部 直居敦)


back to mutual page