信託財産留保金について教えて下さい



 信託財産留保金は元々、単位型投資信託のクローズド明け後の解約を防ぐために考え出されました。信託終了前に解約する人は一口当たり100円とか50円のペナルティーを徴収することで、少しは解約が減るのではないかと考えたのです。また、解約の際には、ファンドの運用に際して、解約代金分のキャッシュを作る必要があります。そのためには保有有価証券を売却しなければなりません。しかし、保有有価証券の売却には売買手数料がかかります。信託財産留保金の制度が出来る前までは、解約された後に、保有有価証券を売却するという形態をとっていたため、その売却のための手数料は、残された投資家で負担していたことになります。そこで、解約の際には、その解約のための売却手数料は、解約する人が負担してねというのが、信託財産留保金が考え出されたもう一つの理由でもあります。

 信託財産留保金は投信会社がもらうわけでも、販売証券会社がもらうわけでもありません。その金額は全て、ファンドに帰属します。つまり11,000円の基準価額で100円の信託財産留保金を支払って解約する場合は、解約する人は10,900円しか受け取れないわけですが、その100円分はファンドに置いて行くわけです。

 これを例を用いて説明してみましょう。
 純資産総額110億円、基準価額11,000円、信託財産留保金が100円のファンドがあったとしましょう。投資元本は100億円、口数は100万口ですね。ある日、66億円の解約が一度に生じたとします。元本は60億円、口数にして60万口ですね。ファンドの方は純資産が44億円に減少します。投資元本で40億円、口数にして40万口です。このままですと、基準価額は44億円を40万口で割って、11,000円のままです。しかし、この解約者達は6,000万円の信託財産留保金をファンドに置いて行くわけですね。そうすると純資産は44億円ではなく44億6,000万円になります。これを40万口で割ると、11,150円になります。つまり、150円の基準価額の上昇になるわけです。

 これは売買を考慮していませんから、実際には、保有有価証券を売却することによる売買手数料で、信託財産留保金の上昇分は相殺されてしまいます。

 その上、投資家の方がこれを考慮して、投資を行うのは不可能に近いと思います。あくまでも、これは保有有価証券の値段が変動しなかった場合の試算でありますので、実施は保有有価証券の値動きによって、150円以上に値上がりしたり値下がりしたりするかもしれません。ですから、これをもとに投資を検討するのではなく、そう言うこともある、つまり、基準価額は投資対象の値動き以外にも、変動要因があるんだ程度にお考えいただければ宜しいのではないかと思います。

 以上、信託財産留保金は、単位型投資信託に導入された制度ですが、買付や解約を行う投資家に、買付や売りつけのための手数料を負担してもらおうという考え方から、追加型投資信託にも導入されるようになりました。特に解約の際に信託財産留保金を徴収するファンドは結構一般的になりつつあります。しかし買付にの際にも信託財産留保金を徴収するファンドは、今だに少ないです。買付の際に信託財産留保金を徴収する場合も、上の例と同じようにファンドにその資金は流入されますから、基準価額の上昇につながります。ただ、解約の場合と同様、資金流入分は有価証券の買付を行いますので、その分の買付手数料で相殺されると考えて差し支えありません。

 最後に・・・誤解を避けるために『保有有価証券』『投資有価証券』という表現を使っていますが、株式投資信託をイメージする場合は、これを株式に置き換えて読んで下さい。

 以前に信託財産留保金について解説した事がありますが、今回の説明とどちらが理解しやすかったでしょうか?


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