ダブルトレンドは株式市場にどういう影響を与えるのでしょうか?
まず、ファンドの基本的な概念ですが、インデックスの2倍の騰落率の
ファンドを設計するのは、理論的に不可能です。
簡単な例を用いて説明しますと、
設定日 1日後 2日後
日経平均225種 18,000円 19,800円(10%上昇) 21,600円(20%上昇)
ファンドの設定日に日経平均が18,000円、次の日に10%上昇し、その次に日には
設定日から20%上昇したと仮定しましょう。
設定日に買い付けた人は、
設定日 1日後 2日後
10,000円 12,000円(20%上昇) 14,000円(40%上昇)
この基準価額の推移で何の問題もないわけですが、1日後に12,000円で買い付け
た人にとっては日経平均は19,800円から21,600円へ9.09%の上昇をしているわけ
ですから、当然、2倍の18.18%の上昇をしなければならないわけです。
しかしながら、12,000円から14,000円の上昇では16.67%の上昇にしかなりません。
つまり、インデックスの2倍の騰落率を、いつファンドを買い付けたお客様にも、
提供することは不可能なわけです。
そこで、ほとんどの(全てのファンドの受益証券を確認したわけではないので・・)
ダブルトレンドまたはそれに類するファンドは、「2倍の騰落率」ではなく、
「純資産の2倍の投資を行う」またはそれと同じような表現がとられているはずです。
つまり、投資有価証券とそれに類するもの(先物等)をたすと、純資産の2倍に
なるように、常に調節すると言うことです。
それでは、次に、ダブルトレンドの運用についてですが、
(同じく、日経225のダブルトレンドの場合)
100億円の純資産でファンドが設定された場合に、(日経225種現物+日経平均先物建
て玉)を200億円としなければなりません。日経平均が1割上昇すると、200億円が220
億円となりますので、利益は20億円です。そうすると、純資産は120億円になります。
(日経225種現物+日経平均先物建て玉)を純資産の2倍とするためには、240億円と
しなければなりません。しかしながら220億円しかなかったわけですから、あと、
20億円の買いを行わなければならないということです。
逆に日経平均が1割下落した場合には、200億円が180億円になりますから、損失は
20億円となり、100億円の純資産は80億円になりますから、(日経225種現物+日経平
均先物建て玉)はその倍の160億円でなければなりません。つまり、20億円余計です
ので、20億円の先物を売却することになります。
つまり、ダブルトレンドでは、資金の流出入がなくても、対象インデックスが
上昇すると、先物を買い、下落すると先物を売らなければならないということです。
このファンドの担当者はやはり、引け値と同じ値段で売買したいわけですが、
先物の枚数が多くなると、引けで値段が付かずと言うこともありますから、
引けの時間が近づいてくると、必要な枚数を、何回かに分けて売買するわけです。
以上のことから、インデックスが上昇しているときに解約が出ても、純資産が増える
事による買い付けと、解約による売り付けが相殺されますから、市場へのインパ
クトは小さくなりますが、インデックスが下落しているときに解約が出ると、純資産の
減少による売り付けと解約による売りつけの両方を勘案して、先物を売却するわ
けですから、市場へのインパクトは大きくなります。
それと、当然、このファンドが建てている先物は、解約がない限り、半永久的に
ロールオーバーされます。よって裁定ポジションを持っている業者が、ロールオーバ
ーできるだけの、当限月と次限月との鞘を提供する一因となります。
というわけで、今現在、某D社を筆頭に各社で大量に設定されている、ダブル
トレンドまたはそれに類するファンドによって、株式市場はSQとは無関係な時
期に、裁定解消がどどどどどっと出る可能性をもっているわけです。
現在のところ、金利低下への期待による株式市場の先高感から、ダブルトレンドの
解約は、あまり、市場へインパクトを与えていないようですが、果たして、
当ファンドの購入者全員がhappyになれるのかどうか、予断を許さないといった
ところでしょうか・・・。
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