クローズド期間が明けると、資金が流出して、運用に支障がでるのかな?
単位型投資信託の場合、解約に際し一定の条件(解約できない期間)があります。
この解約が出来ない期間をクローズド期間と言います。
クローズド期間は
ファンドの基本的設計ですから、必ず、受益証券説明書のどこかに記載して
いるはずです。なければ、それはクローズド期間のない商品(信託期間終了
まで、解約が出来ないファンド)か、オープン投信かのいずれかと思います
が、違ったらごめんなさい。(あっ、某社では、信託期間中に元本の一部を
返済するというファンドがありましたが、どのように表現していたかは記憶
にございません)
クローズド期間は、以前は
- 成長型(株式を100%組み入れることが出来るタイプ)→1年
- 安定成長型(株式を70%まで組み入れることが出来るタイプ)→2年
- 成長型(株式を50%まで組み入れることが出来るタイプ)→3年
と、いうのが一般的でした。ちなみに信託期間は4〜5年というのが一般的
で、また、2.と3.がマル優適格商品とすることが出来ます。
そして、クローズド期間を短くすることに関して、当局は、乗り換えの対象
となるとして、否定的であったかと思います。ところが、バブル崩壊以降、
風向きが変わりました。株式の下落過程で "株がまだ下がりそうだから、
このファンドを解約したい。" "いや、クローズド期間だから出来ません"
という会話が店頭でなされたか否かはわかりませんが、とにかく、クローズ
ド期間の長いファンドは、なにかの時に逃げられないからいやだというお客
様の声が広がったこと、また、当局としても投資家の自己責任を促す意味で
クローズド期間を短くすることに否定的な見解が減少しました。その結果と
して、各社からクローズド期間3カ月とか、クローズド期間なし、という商
品が生まれるようになりました。
以上のことから、クローズド期間の短期化は、会社型投信が商法上(かな?)
無理な現状では、必要悪なんだろうと考えております。ただ乗り換えて、
同じ性格のファンドを買うのであれば、投資家にとってメリットが少ないと
思われます。少なくとも、株式はいけると思いまして成長型のこのファンド
をお奨めしましたが、景気の回復が思ったほど順調ではないので、このファ
ンドを解約して株式の組み入れ比率が低く安全性の高いこちらのファンドに
しませんか。というかたちで、クローズド期間の短期化を利用していただき
たいと思っております。
さて前置きが長くなりましたが、運用担当者にとって、クローズド明け後の
資金流出が運用(またはパフォーマンス)にとってマイナスなのでは、とい
う議論ですが
まず直接的な影響から考えますと
- 資金流出に備えるため保有有価証券の売却を行うことで、手数料分は、確実にマイナスになります。これを例にとって説明しますと(前提条件 株式の売買手数料を1%、当初設定額を100億、株式の時価は変わらないとしましょう)
(ア)クローズド期間がなく信託期間終了日に、100億円が一気に解約される場合
→(100億×1%÷100億)×10,000円=100円
基準価額への影響は100円のみです。
(イ)クローズド明け以後10億づつ10回に分けて解約がでる場合
(10億×1%÷100億)×10,000円= 10円
(10億×1%÷90億)×10,000円 = 11円
:
:
(10億×1%÷20億)×10,000円 = 50円
(10億×1%÷10億)×10,000円 =100円
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
292円となります。
- 投資信託は株式と同じように、解約を行った場合4日目には資金を用意
しなければなりませんが、当日の解約分をすべて、その日に用意するのは
時間的に不可能(担当者には翌日に知らされる)なため、当日の解約分は
予測で用意しておかなければならず、株式を100%近く組み入れるのは
不可能。よって、成長型で担当者が超強気でも80〜90%程度の組み入れに
ならざるを得ない。先般の規制緩和により資金流出対応として、借入が
出来るようになりましたが、計理上どのように処理するかが、決まって
おらず、現状では使えない。
- それでも資金が足りない場合は、市場へ有価証券を売却することで、対応
するわけですが、とにかく、売却できることを優先するため、売却値段は
2の次になり、叩き売ることになりかねない。これは、自分で自分の首を
しめるような物で、基準価額には当然マイナス。また、売れる物を売りま
すので、売れにくい小型株等ばかり、ポートフォリオに残ることも・・。
次に、間接的な影響を考えますと、
- クローズド明け前と明け後では、ポートフォリオが変わってしまう。
株式市場は単位株という制度がありますので、正確に縦割りで、売却する
ことは、出来ません。(同じ銘柄群でポートフォリオを組んでも、多少
その組み入れ比率が違うだけで、その基準価額は驚くほど違ってきます)
- 解約があることを前提にポートフォリオを組むことになる。
これは、運用担当者の証券会社への信頼感によると、思いますが、多額の
資金がいっぺんに解約されることが懸念される場合、上記3.を恐れて、
流動性がポートフォリオを組む場合に優先されます。これは、ある程度は、どの
ファンドも、考慮することです。保有株数を売却するのに1年も2年も
かかるような銘柄は、当然運用対象銘柄とはなりにくいです。
- 解約が続くことで、資産が減少し5億とか10億とかになると、ポートフォリオを
組むこと自体、不可能になってきます。5億のファンドで100銘柄を組み入れ
ると1銘柄当たり500万円ですから5000円以上の値嵩株は購入しずらいで
すね。また3500円の銘柄は1000株だと、0.7%、2000株だと1.4%ですから
等金額投資のファンドならば、その機能そのものが維持できなくなります。
- 相場を弱気に見て株式を売却しても解約によって比率が上がってしまう。
- ポートフォリオを変更する場合、資金の流入があれば、それに合わせて、買いに
いくことで、変更できるが、資金の流出しかない場合、まず、売却して
それが、確認されてからでないと、買い付けを行えない。
しかしながら、クローズド期間後の大量解約が基準価額にとって悪影響ばかりではありません。
解約に備えて、比率を大幅に下げていたために、株式の下落の影響を軽微に
とどめることが出来た。なんてこともあるようです。
結局、対インデックスで考えるから、資金流出の影響が気になるわけでして、
投資対象市場が大幅に上がる場合、基準価額が大幅に上がることは、まず、
間違いないわけですし、1年で投資対象市場が2割も上がったとしたら、
上記のようなマイナスを考慮してもお客様にとって喜んでいただける商品
となるのは、疑うことはないと思います。よっぽど、クローズド明のタイ
ミングが悪かった場合を除いて。
以上、解約による資金流出はファンドの運用にとってマイナスであることは
事実でありますが、現状、ファンドの基準価額が低迷していることの主因
ではありません。基準価額低迷の主因はあくまでも、市場の低迷によります。
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