平均信託金による基準価額の希薄化について


今回は平均信託金の希薄化についてです。
簡単な例を用いて説明しましょう。
1口1万円でファンドが設定されたとします。この時点では税込み基準価額も 売買基準価額も平均信託金も1万円です。純資産も1万円ですね。 このファンドが、投資有価証券の値上がりにより、純資産が1割上昇し、11,000円に、 なったとします。税込み基準価額も1口のままですから、11,000円になります。 しかし、1口のまま、追加設定されてなければ、平均信託金は 1万円のままです。売買基準価額は
  10,000円+(11,000円−10,000円)×0.8=10,800円
となりますので 10,800円です。ここで、1口追加設定があったとしましょう。買い付け代金は 売買基準価額ですから、10,800円がファンドに追加されます。 純資産は
11,000円+10,800円=21,800円
となります。口数が2口になりましたから、 税込み基準価額は、
21,800円÷2口=10,900円
となります。
つまり、11,000円だった税込み基準価額が、追加設定のために、10,900円になった わけです。これが、平均信託金による希薄化です。 追加設定による希薄化という方が、しっくりくると思いますが(^_^;) ちなみに売買基準価額は、10,800円のまま変わりません。ですから、売買基準価額の 方が追加設定による、影響はないのですが上の例で、投資対象が1割上昇しているの に売買基準価額は8%しか上昇しませんから、売買基準価額、税込み基準価額とも パフォーマンスの測定には問題があるということです。

ついでですから、分配金についてもまとめてみましょう。
分配金には普通分配金と特別分配金があります。
上の例をそのまま使います。
1口1万円が11,000円になった時点でファンドの利益は、1000円です。 これは、その後追加設定の際に2口になった時点で、分配金を出そうとすると 1000円÷2口=500円となりますが、500円しか分配金を出せないのは、最初に 10,000円で買った投資家に不公平になるので、10,800円で購入した投資家の資金 の内、800円分は分配金として、支払っても良いことになっております。 800円÷2口=400円となりますので、500円+400円=900円の分配金を、このファンドは 支払うことが可能になります。
この際、実際にファンドがえた利益からの分配金500円を普通分配金といい、 後ほど追加購入した資金からの分配金400円を特別分配金と言います。

税金は、当然、実際に得た利益にしかかかりませんので、普通分配金は20%の 税金がとられますが、特別分配金には税金がかかりません。 顧客の手取額は900円−500円×0.2=800円となります。
分配落ち後の基準価額ですが、税込み基準価額は当然、分配金の全額が差し引かれ ます。上の例では、10,900円−900円=10,000円となります。 売買基準価額は投資家の手取額分(分配金から税金を差し引いた額)だけ、落ちます ので10,800円−800円=10,000円となります。 ちなみに、平均信託金は、特別分配金の分だけ差し引かれます。

次に、分配金をもらう前と、後のどちらで、売却した方が良いのかということですが、>顧客は、税込み基準価額で売買するわけではなく、売買基準価額で売買する わけですから、どの時点で売買しても顧客の利益は変わりません。
1口1万円でファンドが設定され、基準価額が11,000円になり、その後追加設定が 1万円あって、最後に分配金が、1000円支払われた場合を考えてみましょう。
  税込み基準価額 平均信託金 売買基準価額 顧客の利益
   10,000円    10,000円  10,000円    0円
基準価額が11,000円になったとすると
   11,000円    10,000円  10,800円   800円
追加設定は売買基準価額10,800円で行われますから 平均信託金は
(10,000円+10,800円)/2=10,400円になります。
   10,900円    10,400円  10,800円   800円
分配金が900円(普通分配金500円、特別分配金400円)ならば
   10,000円    10,000円  10,000円   800円(分配金900円が100円の税金を徴収される)
となりますので、顧客の利益は、どの時点で売却しても変わりません。 つまり、ファンドのパフォーマンスを比較する場合には、追加設定による基準価額の 希薄化は大きなマイナスになりますが、投資家にとっては、税金の負担か 希薄化によるマイナスかの違いだけで、投資家の収益には全く影響しないことが わかります。これは、2次点の比較で、しかも、上昇した場合の比較ですので、 基準価額が下落した場合や、途中で何度も追加設定がある場合は、問題もあることは 否めませんが・・・。

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