第七日目 夜(A列車で行こう)

 ニューヨーク大学図書館の前でこはま氏と待ち合わせをする。日本人らしき若者が突然話しかけてきた。なにかと思ったらWSJを見せろと言う。株価の所を熱心に見ていた。「何か持っているんですか?」と聞くと「ちょっとね。」と笑って去っていった。うーん。道ばたで素人が株価談義を始めるようになると、株価は天井圏と言うが、それに近い兆候はあるのかもしれませね。

 こはま氏が登場。一緒にまずはスペイン料理の店に。ここで腹を満たしながら、お互いの近況を話し合う。こはま氏が私と同じ年だとは知らなかった。彼はここに赴任してきてはや4年。もう失業保険も効かなくなったと嘆いていた。

 8時過ぎにブルーノートへ向かう。今日はカウントベイシーオーケストラが出演するらしい。

 店内に入ると、狭いステージに12〜3の椅子と譜面台が置かれていた。譜面台にはカウントベイシーオーケストラと書かれている。こういうのを見ているうちに、徐々に盛り上がってくるのである。シンガポールスリングを飲みながら、ショーが始まるのを待っていると、直ぐに、メンバーが2階から降りてきた。

 「ワン・ツー・スリー・フォー」の掛け声とともに、演奏が始まった。ビッグバンドのステージを見るのは久しぶりである。厚みのあるブラスの音が心地よい。ドラムが狭いステージにもかかわらず、派手な演奏スタイルで我々を楽しませてくれる。

 サックスのソロやトロンボーンのソロが絡みながらステージは進行する。途中で指揮者が変わり、フルアコのギターを抱えた人が出てきた。丸みのあるジャズギター独特の音で、さらに演奏が続く。最後から2番目の曲は、聞きなれたピアノの前奏。「A列車で行こう」という曲が始まった。ギターをフューチャーした「A列車で行こう」を聞くのは始めてである。

 コンサートが終了して店を出る。盛り上がった我々はもう一軒行こうと、近くのボトムラインと言うロック系のライブハウスに入った。ブルーノートよりもステージは大きい。そしてステージには椅子が7個、そして生ギターとピアノが置いてある。生ギターの掛け合いでも始まるのかと、期待が高まる。

 しかし演奏が始まると、一人づつ生ギターを弾きながら歌を歌うだけであった。順番に演奏し、司会者と掛け合いをしながらステージは進行する。しゃべりが長い上に演奏は一人ずつなので少々飽きてきた。途中で3番目に演奏した女性は、迫力あるギターを弾いていたが、後は普通の引き語りである。

 ステージの途中で、諦めて店を出ることにした。店を出て、こはま氏と別れて宿泊先へ向かう。

 今日がNY最後の夜。ラストのボトムラインは今一つだったが、非常に充実した夜になった。「A列車で行こう」を聞けたのが最大の収穫。ビッグバンドも健在なのである。



back to my homepage


WebMaster:Kimihiko Uchida b obubeck@can.bekkoame.or.jp
or otherwise qzg00456@niftyserve.or.jp
©copyright 1998 Kimihiko Uchida