第五日目

 今日は,メトロポリタン美術館で,芸術を堪能する1日。地下鉄レキシントンアベニュー線で86St.駅へ向かう。地下鉄の利用も慣れたものである。地図も見ずに,気軽に目的地にたどり着けるようになった。

 86St.からメトロポリタンの入り口までは少し歩かなければならない。西へ歩いていくとセントラルパークが見えてきた。今度は南に少し歩いていく。そうするとメトロポリタン美術館の外観が見えてきた。

 入場料は8$。メトロポリタンのマークの入ったバッジを手渡され、それを胸につけて中に入った。メトロポリタンは一日や二日では全部見ることは不可能とよく言われる。そこで彫刻や陶磁器、民芸品はすべて無視することにした。またここのギャラリーは国毎に分かれているので。日本やイスラム圏、アジア圏の美術も無視。欧米の絵画に焦点を当てて鑑賞することにした。まずは右手の方に入っていき,アメリカギャラリーを見学。フレデリックEチャーチのAEGEAN SEAという絵が印象的だった。海の向こうにお城が建っている幻想的な作品だ。フランクウオーラーの絵も面白かった。メトロポリタンで客が絵を鑑賞している様子を描いた作品。こういった,半分遊びのような作品はアメリカならではのものだろうか。

 次は20世紀美術を集めているギャラリーへ。見慣れたウオーホールの版画が展示されてある。ここで、面白かったのはジョンFパトの絵。バイオリンの絵や、オフィスボードの絵が中心なのだが,オフィスボードが妙にリアル。こんなものが絵の題材になるのだなぁと感心してしまった。ウィリアムダーナットのカルテットという絵も素敵だった。二人の男女が歌っている横で,一人がギター一人がベースを弾いている。ベースを弾いている男の人は背を向けて煙草をくゆらしながらベースを弾いているのだが,それが妙に格好良い。ジャズの調べが聞こえてくるようだ。

 美術館内にあるカフェテラスでランチをとった後は,ヨーロッパの絵画ギャラリーへ。途中でミュージカルインンスツルメンツギャラリーに入ろうとしたのが,ここはオープンしていなかった。

 ヨーロッパの絵画ではモネの絵が印象的だった。淡い色使いが私の趣味に合う。ジョセフディセットのTEAという絵も,シルバーの紅茶入れが妙にリアルで印象的だった。ヨーロッパの絵画では、人物画が結構多いのだが,これはどうも好きになれない。中世の人物画は今で言う記念撮影のようなものだろう。金持ちが金にまかせて描かせたものだろうし、記念撮影的な気取った表情なので,その人の裏側を写し出してはいないような気がするからだ。とは言って,アメリカギャラリーで見たピカソのような表現も,よく分からない。20世紀ギャラリーにあった,白いペインティングに黒の線を一本描いて芸術だと言われても素人には戸惑ってしまうばかりだ。やはり、風景画が一番落ちつく。モネやターナーの絵を見ていると,風景画の中に,作者の気持ちが伝わってくるような気がする。

 ヨーロッパギャラリーを回っているうちに,足が棒のようになってしまった。とにかくこの美術館,広い上に分かりにくい。どんどん建物を付け足して今に至っているだけに,どこをどう歩けば目的のギャラリーの辿り着けるのかがすぐには分からない。何度も行ったり来たりしながら歩いただけに,閉館間際には,もう体はぼろぼろ。芸術鑑賞は体力が勝負であることを痛感したのである。



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