第四日目 夜(デュークエリントンを偲ぶ)

 イリジウムは昨年も来たジャズのライブハウスだ。レスポールが経営している店で、ライブにもレスポールが参加する。昨年、レスポールが登場した時は感動で涙がちょちょ切れそうになった。今年も同じ事を期待をしてこの店にやって来たのだ。しかし、入り口にあるスケジュール表を見ると、レスポールの出演は月曜日だけとのこと。今日は、私の知らないプレイヤーの出演だけだ。更に、この場所は、地下鉄で宿泊先に帰るためには、乗り換えが必要なので少々厄介。そこで、イリジウムに入ることを諦めて、バードランドと言うお店に行くことにした。

 昨年アップタウンからミッドタウンに移転したとのことなので、お店もきれいだろう。場所もタイムズスクウェアの直ぐ近く。夜もそれほど危険ではないだろう。

 地下鉄でタイムズスクウェアまで来て、バードランドに入り、席が取れるかどうか確認する。全然問題ないとのことなので、1回目のショータイムが始まるまで、近くのステーキハウスで夕食を取り、酒を飲みながら待つことにした。

 そのお店で、野球を見ながら時間をつぶし、8時過ぎに再度バードランドに入ると、入り口の女性は私のことを覚えていたようで、直ぐに席に案内してくれた。ショーチャージは10$。安いもんだ。このお店は、秋吉敏子が毎週月曜日に演奏しているようだ。今日の演奏は誰かとプログラムを見ると、デュークエリントンとでかい字で書いてある。え?え?え?と驚きながら、よくよくプログラムを見ると、デュークエリントンと書かれた直ぐ上に小さい字で「レガシー・オブ」と書かれてある。多分、デュークエリントンと一緒にやっていたプレイヤーかメンバーにいるのだろう。後で聞いたところ、実はデュークエリントンよりも長くやっているバンドらしい。サテンドールと言う曲を書いたのは、このバンドのドラムの人らしい。

 近くのステーキハウスで、野球を見ながら時間をつぶしていた間は、時間が経つのが遅いと感じたが、バードランドに入り、ショーが始まる9時までの時間は、プログラムを見ているうちに、すぐに経ってしまった。メンバーがステージの上に集まり、演奏が始まった。

 トロンボーン、アルトサックス、トランペット、テナーサックス、そしてピアノにウッドベース、ドラムと言う結構大掛かりな編成だ。デュークエリントンバンドで演奏していたような曲を中心に軽快な曲が続く。ピアノは日本人。髭を生やし、店に入ってくる時には若い女性を二人引き連れて入ってきたのでずいぶん、気障な奴だと思っていたが、演奏は結構まとも。そしてトロンボーンもなかなか渋い演奏を聞かせてくれる。選曲も良く知った曲が多く楽しめる。

 客の中に、デュークエリントンの妹が来ていた。ドラムの人が、「今日はエリントンの妹が来ているんだ。」と紹介して、ステージは最高潮に。トロンボーンのソロやサックスのソロでは、会場から自然と拍手が起きる。

 1時間のショータイムが終了し、帰ろうと思ったら、ピアノを弾いていた日本人が私に話し掛けてきた。「日本人の方ですか〜。」

 彼に、NYのライブシーンについていろいろ教えてもらった。私が日曜日に見ることが出来たリー・リトナーは本当に運が良かったらしい。最近はほとんど、ライブハウスには出てこないらしい。また、コットンクラブという映画にもなった有名なライブハウスは今やライブハウスとしては機能していないとのこと。場所柄、客が入らず最近は、日曜日の午前中にゴスペルを演奏する程度らしい。う〜む、これを知っていたら、日曜日にゴスペルツアーに参加せずに、コットンクラブに行ったのにぃ。

 この日本人のピアニスト(名前をKUNI MIKAMIと言うらしい)は19才の時に単身渡米。以来20年間こちらで活動しているとのこと。渡米する前は阿川泰子と一緒にやっていたとのことだ。私が、「彼女はヌードになってから有名になり、その後テレビの司会とかもやったんですよ。」と言うとびっくりしていた。一緒にやっていたのは、阿川泰子が有名になる前らしく、その後の動向は知らなかったらしい。

 私が、ジャズよりもどちらかと言うと、フュージョン系、特にギタリストが好きだと言うと、それなら、ロスとかカリフォルニアの方が良いライブハウスがあると教えてくれた。これで、来年の夏休みの行き先は決まったようなものだ。

 そんな話をいろいろ聞かせてもらった後に名詞をいただき、握手をして別れ、私はタクシーに乗り込み宿泊先へ帰ることにしたのでした。それにしても、このピアニスト、最初は気障な奴だなぁと思ったのですが、なかなか良い人でした。来日した時にはぜひ応援に行きたいものです。



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