第三日目 マンハッタントランスファー

 タクシーに乗り込んで、「サンセットストリップのビルボードライブまで。」と行き先を告げる。ビルボードライブの写真を撮った後に、ハウスオブブルースに行こうと思ったのだ。しかし、この運ちゃんは、ビルボードライブを知らないようだ。朝のこともあり、不安に思ったが、住所を聞くなり運ちゃんは「オッケー」と、走り出した。

 ところが、交通渋滞がひどく、全く前に進まない。運ちゃんは、さすがにしびれを切らしたのか、さっと大きな通りを抜け出し、裏道を走り始めた。サンセット通りまでの大通りは結構混雑するようだが、裏道は静かで、ハイソな住宅街である。一本、通りがずれるだけでこうも雰囲気が変わるものなのだろうか。

 「ビルボードライブに着いたよ」と、運ちゃんが言うので見上げてみると、なんか違う名前のライブハウスである。しかし、運ちゃんはここだと言う。仕方がないので、そのライブハウスの写真を撮り、ハウスオブブルースに向かってもらうことにした。道路が混雑しているので、これ以上、彷徨ってもあまり良いことはなさそうだ。

 ハウスオブブルースはレストランも付いているライブハウスである。チケットはスタンディングと書いてあったのだが、中を覗くと、普通のレストランのようである。中に入ると予約しているかと聞かれた。レストランの予約はしていなかったので、そう答えると、40分待ちだという。さすがに腹ぺこなので我慢できない。予約をせずに近くのレストランを探すことにした。どこかにレストランは無いかと探すと、すぐ近くに、バスを改造したジャンクなハンバーガー屋さんがある。早速、ハンバーガーとサラダ、ルートビールを注文する。ハンバーガーはなかなかいけるが、サラダはまずくて食えたものではない。そしてルートビールというのが、本当のビールなのかどうかは分からないが、非常に不思議な味がして気に入った。飲み込んだ後に、妙な味が舌に残るのだ。甘いような苦いような。。。。

 食事を終えて、再度ハウスオブブルースへ。ショーは9時からだというのでまずは、1階の土産屋で買い物。ハウスオブブルースのロゴの入ったTシャツやCD入れなどを購入。なかなか、おしゃれな一品である。

 その後、ホールの入り口でたばこを吸いながら時間が過ぎるのを待とうとしていたら、中から前座のバンドの演奏が聞こえてくる。そして客は、どんどんホールの中に入っていくのだ。おかしいなぁと思って、階段を下り地下のホールに入り、はじめてこの店のシステムを理解した。

   つまり、チケットに書かれているスタンディングというのは、立ち見ではなく自由席と言うことなのだ。ホールにはちゃんといすが並べられている。そして、ステージを見渡せる席は既に客が座っている。席は自由席だけで500くらい。随分、でかいライブハウスである。そして1階のレストランでは、演奏の様子を上から、優雅に食事をしながら見ることが出来る仕組みになっているのである。つまり、40分待って、レストランに入っていたら、マンハッタントランスファーの演奏を食事をしながらゆったりと聴くことが出来たのである。しかし、私がホールに入ったときには、まだ開演1時間前なのにも関わらず、席はほとんど埋まっており、後ろの方しか空いていなかったのだ。うーん、残念。

 しかし、、幕が上がり、演奏が始まった途端に、そんな後悔も吹き飛んだ。ご機嫌な演奏が始まったのだ。バックは、ピアノ、ギター、サックス、ドラム、ベースの5人編成。それにマンハッタントランスファーの4人である。

 ショーの前半は、スウィングジャズ。ちょっと音量が小さいのが難点だが、昨日のマスタードプラグとは違って、十分にこなれた演奏を聴かしてくれる。マンハッタントランスファーの4人もノッている。数曲、スウィングを演奏した後は、一人づつソロ。生ギターと掛け合いをやったり、ベースと掛け合ったりとなかなか凝っている、スキャットではペットの消音器を付けたような声を出して場内を沸かせていた。

 観客の様子はと言うと、思ったより大人しい。演奏が始まった途端に総立ちになるのかと思っていたのだが、みんな座って大人しく聞いている。ソロが終わったときには、拍手と歓声がおきるが、それ以外はじっと耳を傾けているのだ。今や日本の方が、観客の質は悪くなったのかもしれない。

 ショーの後半は、ギタリストはエレキギターに、ベーシストはエレキベースに持ち替えて、ハードな演奏だ。しかし、バンドのアンサンブルは崩れない。そして4人の声もちゃんと聞こえてくる。ミキサーの腕も確かなようだ。

 ノリに乗った演奏が終わり、アンコールの声がかかる。しかし昨日タクシーを捕まえるに苦労したので、今日こそは、すぐにタクシーに乗り込もうと、アンコールの演奏を聞かずにホールを出た。しかしそこにはタクシーの列が。。。。

 つまり、ハウスオブブルースとロキシーではライブハウスの格が全く違うのである。ガイドブックには、同列に書かれているが、ハウスオブブルースは収容人数も多く、ミュージシャンの質も高い。外から見ると小さなブリキ小屋なのだが、見かけにだまされてはいけないのである。中はおしゃれなレストラン、そして吹き抜けのホールになっていて、地下のホールは500人近くを収容できる立派なコンサート会場なのだ。それに比べてロキシーは日本にもあるような小さなライブハウス。席は少なく、後はディスコホールみたいに立ち見の席があるだけだった。ガイドブックにはこういったことをきちんと書いて欲しいなと思う。

 それにしても、サンセットストリップにはライブハウスが多い。タクシーに乗ってホテルに戻る途中、サンセットストリップでは、客がドアのところにたむろしているライブハウスがたくさんあった。次回LAに来る機会があればそのときには、サンセットストリップにホテルをとり、ライブハウス三昧としゃれ込みたい。



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