日銀の決断

 日銀の決断に対して、不満が渦巻いている。この円高を止めるためには不胎化しない介入によって資金を市場に供給するしかないと市場が盛り上がっていただけに、これを否定した日銀の決断に対して、円高、株安という結果で反応したのだ。

 個人的にはこの決断は正しいと思う。実際、資金は既に市場に大量に供給されているわけだし、更にドル買い介入によって資金を供給しても、経済活動への影響は非常に限定的なものにとどまるだろう事は明白だ。ただ、問題は、政策決定前の市場の期待、つまり不胎化しない介入によって資金を市場に供給するのではないかとの市場の期待が高まっている中、その期待を放置してきた事にあるのではないかと思う。

 つまり、それだけの期待が高まれば、何もしない事への失望は大きい。ネガティブサウライズとして、市場は反応する。政策決定会合前にそれだけの期待を醸成してしまった責任が日銀にあるのではないだろう。

 「不胎化しない介入によって資金を市場に供給したとしても、材料出尽くしで円高なっただろう。」と日銀は言う。仰る通りだ。しかしもし、市場にそういった期待感が醸成されていなかったら、ポジティブサプライズとして市場は反応し、有効に円高阻止として機能したはずなのである。

 どうも、日本の場合、企業も日銀も自分たちにとって都合の良い方向に市場が動いている時は、何もアクションを起こさない。そして都合の悪い方向に市場が動いた時に、始めて何らかの対処をしようとするのだ。しかし、自分たちにとって都合の良い方向だとしても、それが行き過ぎならば、市場に対して何らかの警告をすることが、その後のネガティブサプライズを引き起こさないために必要なのだ。

 マイクロソフトは決算発表前にアナリスト達に、「アナリストの予想は楽観的過ぎる」と警告することが度々ある。いかに業績が良くても、アナリストがそれ以上に良い業績予想をしていたとすると、市場は失望し、株価は下がるだろう。そのために、マイクロソフトは、一時的に株価が下がると思われても、アナリストの楽観的業績予想に対しては警告を発し、楽観的な株価形成を阻止するのである。その結果、株価は安定的な上昇を続ける事が可能となったのだ。

 市場を操作する事など不可能である。ただ、楽観的な市場の期待に対しては、何らかの形でその期待を小さくする事が必要であり、その事が、ネガティブサプライズを生じさせない事にも繋がるのではないだろうか。



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