地方債の信用度

 何度か地方債の信用について話をしてきたが、四つの信用補完機能については既知のこととしてきた。しかし、一旦まとめておく必要があるかもしれない。

 地方債の信用度を補完する機能として自治省が掲げているのは@地方交付税交付金、A地方財政計画、B財政再建制度、C地方債許可制度、の四つである。@の地方交付税交付金とは、地方間の税収格差を埋めるための制度である。各自治体毎に基本的な行政サービスを住民に提供するのに必要な額を計算し、足りない分を国税五税で補う制度である。地方債の元利に関しても一部は必要な額として参入されるので、その部分は国の保証があると考えても良いだろう。しかし、この制度の問題点は、「基本的な行政サービスを行うのに必要な額」というのが非常に複雑な計算を要し、自治省の思惑一つで大きく変動するという点だ。

 Aの地方財政計画とは地方財政をマクロで捉えていくというもの。@で計算した「基本的な行政サービスを行うのに必要な額」の地方自治体全部の合計額を算出し、国税五税で賄い、足りない分は資金運用部からの借り入れで補っている。しかし、現在この借り入れは、20兆円を超え、ほぼ、地方財政の一年分の予算に匹敵するまでに拡大しているのだ。つまり、この制度は、早晩破綻をきたすことは間違いないというわけ。

 Bの財政再建制度は、財政に破綻をきたした自治体を財政再建団体と認定し、自治省の指導の元に財政再建を目指すというもの。しかし、財政に破綻をきたしていても、逃げ道がいくらでもあるようで、実際に財政再建団体に指定されているのは現在一団体しかない。今年から来年にかけて、某自治体が財政再建団体に指定されるのではないかと見られているが、果たしてどうなるのだろう。

 Cの地方債許可制度は、読んで字のごとく。地方債の発行は国の許可が必要だから、何かのときには国が責任を取るはずだというもの。しかし、許可することと保証することは明らかに別の経済行為であると考えるのは私だけではないだろう。更に、この許可制度は今後廃止され、協議制に移行することになっている。

 以上、自治省が掲げる地方債の信用度を補完する四つの制度はいずれも、完全なものではない。また将来的には地方分権への動きが加速されていくと見られる中、お題目のように「国と地方の信用度は同じ」と叫んだところで、意味をなさないのである。

 ただ、四つの制度が絡んでいることで、ディフォルトの可能性は非常に低くなっていると考えるのはまちがいではない。つまり、各格付機関が公表している自治体格付、つまり「国と同じ信用度ではないが、それほど低い格付ではない。」という考え方に間違いは無いと思う。あとは、こういった信用度に見合った利回りで債券が発行されるようになることを、祈るばかりである。信用度が低い債券は誰も買わないというわけではない。その信用度に見合った利回りであれば、言いかえると、リスクに見合ったリターンが期待できるのであれば、投資家はいくらでもいるのである。この点を見落とさずに今後の地方債発行を考えて欲しいものである。



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