夏子の酒

 『夏子の酒』と言う漫画がある。少し前に、モーニングに連載されていたのだが、現在文庫版の大きさで、出版されている。私はモーニングに連載中、この漫画を楽しみにしていたので、文庫版が出版された今、これを買ってきては、酒を飲みながら再度読み返している。

 話の筋は、コピーライターだった夏子という日本酒の蔵元の娘が、美味い日本酒を作ろうと思い立ち、会社を辞め実家に戻る。そして、様々な苦難にもめげず成長していく。というものである。

 この中で、実に現在の日本を表しているなぁと言うシーンがある。夏子の実家が経営している蔵元は、味を追い求め、そのために、量はそれほど作れないし、CMだって流していない。値段だってそれほど安くはない。これに対し、大手の蔵元が、CMをがんがん流し、酒には大量に混ぜ物をしてコストを引き下げ、大量に販売する。そして、酒販店は後者を選択していくのだ。酒販店店主曰く「同じ純米でも安くてぐい呑みが付く方をお客様は買うんです。」「ただ酔えれば良い。そう言う消費者もお客様だ。」「うちの客はほとんど銘柄では買わないよ。何でも良いから特級か1級をくれって言うくらい。」「ジュンマイ?何それ?」

 結局消費者が賢くならない限り、生産者は変わらない。中に、良い物を目指して努力する会社があっても、消費者がそれを選択しない限り、結局淘汰されてしまう。ところがその消費者は、本当に良い物なんて分からない。結局、値段で選ぶか、イメージで選ぶかだ。

 生産者の質の低さを嘆く前に、消費者の質の低さを嘆くべきだろう。不味い酒を誰も買わなくなれば、生産者は味を高めるために、全ての経営資源を注ぐはずである。

 ちなみに、投資を考えるときは、商品の質ではなく、その商品が消費者に受け入れられるかどうかで判断しなければならない。質で考えたら、マックは買い、ウィンドウズは売りだったのかもしれない。しかし現実は逆になった。収益をあげなければならないという、ファンドマネージャーの観点からは、後者を選択すべきなのだろう。個人的には、前者に投資することで、本当に良い物を資金的に後押ししたいと思ってしまうのだが。。。。



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