地方債

 現在仕事で、地方債の信用度について分析している。地方債がデフォルトする事なんてあるの?と考える人もいるだろうが、実際、海外ではNY市が発行した債券がデフォルトになったなどの例がある。ただ、日本の場合、海外に比べても強固な地方債に信用補完制度があるので、国債と同じ信用度で良いと考える人が多いようだ。数日前には、R&Iという格付け会社が、公募地方債の発行体(地方自治体のこと)の格付けを発表し、話題になっている。

 まぁ、信用度そのものについてここで議論する気はないのだが、調べる過程で非常に興味深いことが分かったのだ。それは何かというと、ご存じの方はご存じだろうが、地方債には繰上償還条項がついていると言うことである。

 繰上償還条項とは何かというと、その言葉通り、予定を繰り上げて債券を償還すると言うことである。例えば、市場金利が8%の時に10年満期の債券を発行し、現在、満期まで後6年だとしよう。現在の金利は2%。そうすると、以前に発行した債券の金利8%を払い続けるよりも、現在の金利で借換を行い、2%の金利を支払った方が、有利であろう。住宅ローンや自動車ローンと同じである。そしてこういった条項のついている債券のことを欧米ではコーラブル・ボンドという。callable bondつまり、コールをすることの出来る債券という意味である。

 地方債には繰上償還条項がついているのだから、経済合理性から考えたら、現状の低金利では借換を進めた方が有利であることは自明である。実際、地方議会では「繰上償還条項がついているのだから、権利を執行して借換を行い、財政負担を軽減すべし!」との議論が目立っている。

 ところが、日本では今まで、公募地方債に関して繰上償還が実施された例はない。そして今まで無かったんだから今後もないだろうと言う考えからか、市場では繰上償還条項がないものとして売買されている。

 繰上償還条項がある債券と繰上償還条項のない債券では、値段の付き方が変わってくる。一般的に債券は金利が下がると価格は上がる。繰上償還条項が無い場合には、額面を超えても、金利次第では更に上昇する。しかし、繰上償還条項がついている場合には、いつ繰上償還があるか分からないので額面を超えて価格が上昇する事は難しいのである。(正確には額面を超えてもある程度までは金利次第で上昇する。)繰上償還になってしまえば、110円で買っても120円で買っても100円で償還されてしまう。つまり突然大幅な損失になってしまうのだ。だから、大きく買い上げることは出来ないのである。

 ところが日本では、その繰上償還条項がついているにもかかわらず、地方債の価格は、償還条項がついていないのと同じような価格で売買されているのだ。ところが、驚くべき事は、これだけではない。なんと国債も実は繰上償還条項がついているというのだ。

 うーん。なんというか。経済合理性も何もあったものではない。繰上償還条項のついている債券を気にも留めずに、120円とか130円まで買い上げる日本のマーケットっていったい何なんでしょうね。



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