銀行の投信窓販

 来月より、銀行の投信窓販が始まります。これを期待して、投信評価ビジネスやサードパーティービジネスなども立ち上がっており、業界はまさに、フィーバー状態ですね。ただ、銀行側では、投信を販売するにあたり、証券会社と同じ轍は踏まないと、リスクを如何に徹底するかに、頭を悩ましているようでもあります。

 殆どの銀行では、顧客との関係を悪化させるような販売方法を採ることは出来ないとの考えから、販売するにあたっても、販売員にリスクの徹底を要請するだろう。しかし、「リスクがある」と、言えば済むのだろうか?逆に、「自己責任」と顧客の側に突き放してしまって、ビジネスとして成り立つのだろうか?こういった問題を考えると、現状のままでの銀行の投信窓販には、少々問題があるのも事実である。

 そこで、まずは二つの点に焦点を当ててこの問題を考えてみたい。

 一つは、今は無理に売る必要がない。ということ。各銀行共に、当初の2〜3年は、利益を無視して、足場を固めることに注力するでしょうから、「無理に売るな」「販売額よりも、顧客にリスクを理解させることが先決」となるでしょうが、その後、市場自体は拡大したのに自行だけが投信残高の積み上げが出来なかった場合にどうなるのか?また、投信の手数料に依存する経営に方針転換しているのに、期待した収益が上がっていないと感じたときに、どうなるのか?

銀行経営は、「規模」から「収益性」に、その経営FOCUSを大きく切り替えていると思います。いつまで経っても収益が上がらない場合、撤退できるのかどうか?銀行の経営者がそこまで腹をくくって、投信販売に進出しているかは疑問である。

もう一つは、「思いこみのリスク」である。リスクがあるとみんなが感じているときに問題は起きない。現在外債ファンドで生じている問題は、半年前の状況をきちんと思い出さなければ間違って判断を下してしまうのです。つまり、半年前、みんなドルは上がると思っていた。というよりも円が上がるはずがない。と。そして、それが前提になって、外債ファンドがあれだけの販売額になったのです。

投信販売で問題が生じるのは、「相場観」がいつの間にか「絶対」に変わってしまうことなのです。売る側が、「絶対にドル高になるのだから、このファンドにリスクはない」と勘違いしてしまうのです。(大抵の場合、売り手は相場観で売るのではなく過去の実績を見て売ります。どのファンドを見ても10%で回っていればそう言うものだと思ってしまいます。)

売る側も嘘を付くわけではないのです。そう思いこんでしまうだけなのですから。

現状で株式投信を売る場合は、買う側も売る側も、リスクを認識しています。こういう状況で株式投信を販売しても問題は生じないでしょう。しかし、今後5年間株式が上昇し続けたとしたら、その時にも同じ認識を売る側も買う側も持ち続けられるかどうかが疑問なのです。逆にその時に、「リスクがあります」の一点張りでは、客に相手にされないでしょうし、社内でも浮き上がってしまうのではないでしょうか。

 証券会社の社員がみんな、今まで嘘を付いてファンドを売ってきたわけでもなければ、客を騙そうと思ってやってきたわけでもないのです。そりゃぁ、テレビに出てくるような外務員は、「客を騙さないとやっていけない」と言います。そう言った人達だけが、テレビで放映されるのですから。でも、多くのミディさんや、カウンターレディさんは、「絶対大丈夫」と信じて売ってきたのです。だから、2年前には外債ファンドは全く売れなかったのに、結果を見て段々、販売額が増えてきたのだと思います。  その上、顧客はアマチュアです。中にはプロ並みに研究してファンドを購入する人もいるでしょう。ただしそう言う人達は既に、証券会社で投信と付き合っていると思います。今後、銀行で投信を初めて買う人達は、そのほとんどが、何も知らない人達だと考えた方が良いと思います。そう言う人達に、「自己責任」を無責任に押しつけて、投信を購入するでしょうか?

 銀行が投信販売を始めるにあたって、「リスクの徹底」を重視するのも、必要でしょうが、もっと違う何か。全く新しい投信販売の仕組みが必要なのではないでしょうか?投信のリスクをどこかがバッファーとして吸収し、顧客には元本確保で提供するとか、時価評価を見直すとか。ちょっと極端な意見かもしれませんが、「リスクがあります」と言い続けるだけでは、これだけたくさんの銀行が投信販売に乗り出して、1社も成功せずと言うことにもなりかねませんよ。

 ま、投信の窓販が上手くいかなくても、401(K)プランが始まればと算盤を弾いているのかもしれませんが。



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