東証の私大化

 東証が、上場基準の緩和を打ち出した。直近で赤字の会社でも、その前に多大な利益を上げている企業であれば上場できるようになるそうだ。上場可能企業の範囲が広がることは、良いことなのだろう。しかし何か釈然としないのである。

 日本の大学は、入るのは厳しいが出るのは簡単だと言われる。逆に欧米の大学は、入るのは簡単だが出るのは難しいとも聞く。これと同じ事が、証券取引所にも言えるようだ。日本の証券取引所は、上場基準が非常に厳しかった。利益の水準や株主数、等様々な基準があったし、基準として掲げられなくても、慣習上必要だと言われている更に厳しい基準があったようだ。しかし、上場した後、上場廃止になる企業はほとんど無い。会社更生法を申請したり、自主廃業を申請した企業だけだ。

 NY取引所では、上場基準に関して日本ほど厳しい上場基準は採用していない。しかし日本より頻繁に上場廃止があるそうだ。特に注目したいのは、情報公開に関する基準である。これを満たせない企業は、上場廃止になってしまうらしい。

 東証が上場基準を緩和するのは結構だが、上場維持基準は変えないのであれば、それは、入るのが難しかった日本の大学が、入るのも簡単になってしまうのと同じではないだろうか。つまり、大学の遊園地化である。それを、東証の私大化と表現してみたのである。私大の方には失礼な表現だが、少子化と共に学生集めに苦労するようになれば、私大は、門戸を広げることで対応するようになるだろう。

 東証の上場基準の緩和とともに、維持基準を、見直すべきではないだろうか。業績ではなく、情報公開、いわゆるディスクローズの姿勢をきちんと評価し、粉飾決算やそれに近いような行為を厳しく戒め、上場廃止にするくらいの姿勢が必要だと思うのである。

 もう一つ釈然としない理由は、どうせ、大企業の子会社上場を早めるだけで、ベンチャー企業の育成には寄与しないと思うからである。現在不良債権に苦しめられている大企業の中に、子会社が上場できれば一息つけるところもいくつかある。それらの大企業のための方策なのかと勘ぐってしまうのである。そして、そう言った企業の上場の際に情報公開がきちんと行われるのか不安に思ってしまうのである。

 何も検討されていないとは思いたくない。今後、上場維持基準に関して何らかの変更が東証から発表されることを期待したい。



back to my homepage


WebMaster:Kimihiko Uchida b obubeck@can.bekkoame.or.jp
or otherwise qzg00456@niftyserve.or.jp
©copyright 1998 Kimihiko Uchida