株主価値

 以前より、株価の上昇のためには企業経営者が株主価値増大を経営目標とした経営をしていかなければ駄目と、何度も書いてきた。

 昨日本屋で、経済関係の書物を物色していたところ、私の考えをそのまま代弁してくれているような本があったので早速買ってきた。題名は『株主価値創造革命』著者は井手正介+高橋文郎。税金別で1,600円だ。

 ROEやキャッシュフロー、そしてWACCやROICを基準に、株式価値を論じている点では、私自身海外の書物などを読んで把握していることから、それほど目新しくはない。ただ、過去の日本の株式上昇を、それらの指標と対峙させて、合理的な説明をしている点が興味深い。

 曰く、「・・・したがって銀行大株主にとっての優良企業とは。5円配当できる程度の利益は上げつつ、銀行に依存しながらあくまでも規模成長を続けてくれる企業と言うことになる。高いROEを目指すよりは、程々のROEで良いからものを安く大量に生産販売輸出して、規模拡大を続けと欲しいというわけである。・・・中略・・・我が国の美人投票(株式投資のこと)においては規模成長力こそが最大のチャームポイントであった。・・・」

 つまり銀行が株主となることで、経営者の経営目標は株主に対して最大限の効率を追求して、リターンを極大化することではなく、規模を追求して、借入金を増やすことにあったというわけだ。

 実際、今までの証券会社の証券分析において貸借対照表は重要視されなかった。損益計算書を分析して将来の利益をはじき出し、これに基づいて株価を予測していこうという動きが殆どだったように思う。そして、その利益成長のためには売上増が必要。従って、商品ラインナップの分析こそが株式投資に一番必要な分析だとの認識が広がっていったのだと思う。

 これからは株主価値を増大させているかどうかが、株式投資の主流になるだろう。株式の持ち合いが崩れ、銀行の株式保有が減少する中で、今までの投資価値が意味をなさなくなってくるのだ。そしてそのためには、株主コストを考えることが必要になってくる。株主がどの程度のリターンを求めて、株式を購入しているのかを咀嚼することが必要になってくる。これが本当に理解できたとき、IRのあり方も変わってくるのだろう。会社の業績がよいときだけ、良いと言うことを宣伝するのではなく、悪いときには悪い、そして良いときにも株価が、過大に期待しているときには、コンセンサスほどの業績は出ないよと公表する事で、株主コストを引き下げることが必要になってくると思われるからだ。

 そして、こう言ったことを少しずつではあるが理解した経営者が、増えているように思う。ROEの目標数値だけを声高に叫ぶ経営者は信用できないが、株主価値の増大を真剣に考え、実践し始めている経営者が増えているように思うのだ。そう考えると、日本株式の将来はそう暗いものではないし、そろそろ、そう言った企業をピックアップしても良い時期なのではないだろうか。足下の業績だけを考えずに、株主価値を増やしてくれる企業を探していきましょう。



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