株式の空売り規制を前倒しで実施するとのこと。これに対するマスコミの反応はきわめて否定的だ。「市場を規制するなんて」「与党は何も分かっていない」「市場を規制するよりも、実態の悪さを直視すべき」との意見には、思わず頷いてしまう所もある。しかしながら果たして本当にそうなのだろうか?
米国の例を見てみると、こういった空売りによる売り崩しに関しては、随分前から規制が行われている。いわゆるdowntick or uptick ruleというやつだ。つまり、その日の安値で空売りをすることは規制されているのだ。
市場万能主義は、市場を操作することができないことを前提としている。マニュピュレーション天国の日本で市場が全てと息巻いても、それは、実体経済が投機家の餌食になるだけである。全てをヘッジファンドのせいにするのは、暴論だと思うし、実態を正確に表しているとは思わない。また市場を統制することで、実体価値が高まるとも思わない。しかし、市場を操作できる環境の中で市場万能主義をうたっても、これまた片手落ちなのである。
デリバティブを総量で規制することは避けなければならない。しかし、デリバティブを使った力づくで市場を動かし利益を得ようとする行為は、厳しく規制すべきなのである。半年ほど前に、日本の債券市場でスクイーズが問題になったことがある。米国ではきちんと規制されている行為だ。日本では、こういった問題に対して、なんの対応も、議論もなされてこなかった。
市場の全てを放任するのではなく、市場操作を許さないマーケットを作って初めて、市場万能主義の元で経済を語ることが出来るのではないだろうか。