クレジット・アナリスト

 この低金利下、機関投資家はどのようにして、目標利回りを達成するのか。今までは、利回りの低さを債券の価格上昇が相殺してくれた。しかし、もう、そう上手くはいかないだろう。長期債でも1%を切るような金利の中、どのようにして運用していくのか。

 ひとつは、とにかく、残存期間の長い債券を購入して期間利回りを得るという方法がある。将来の金利上昇による債券価格の下落の事は考えずに、とにかく20年債、30年債などを購入して期間利回りを上げるのが一つの方法である。しかし、これにも限界があるだろう。そうすると、次に考えるのが、クレジットリスクを採る方法である。

 つまり、国債のような格付けの高い債券の利回りは低くても、AとかBBBのレーティングがついた債券は、それなりの利回りになっている。一昔前は、債券がディフォルトするなんて事は考えられなかったので、例えば金融債の利回りも全て横並びだった。しかし、今は違う、発行体の信用力を表す格付けによって、利回りに差が出るようになってきた。当然格付けの低い債券は利回りが高いわけだ。残存期間が5年程度の債券でもAの格付けであれば、1%位、国債よりも利回りの高いものがある。しかし、当然、ディフォルトリスクに違いがあるから、これだけ利回りの違いがあるのだ。

 実際に、AとかBBBの格付けがついた社債の顔(つまり会社名ね)を見てみると、「この会社がつぶれるわけはないだろう」と思うような銘柄ばかりである。個人的には、「もう、そう言う時代は終わった。大きい会社、有名な会社、伝統のある会社であっても、資金繰りに窮するようになれば、倒産する可能性はある。そして、資金繰りに窮するかどうかは、その会社の経営陣、そして経営次第である。」と思っている。しかし、実際にAとかBBB程度の格付けであれば、そう言った心配はないと思われる銘柄が多い。しかし、気をつけなければならないのは、ディフォルトリスクとは、会社が倒産するリスクではないと言うことである。つまり、会社は存続し、将来的にはその債券の元本が帰ってきたとしても、事業収益が低迷した結果、利子が支払得なくなると言うことはあり得るのだ。利子支払いが途切れれば、債権の元本は回収できたとしても、当初期待した利回りは得られないわけで、極端な話、10年たって、利回り0%と言うことだってあり得ると言うことだ。

 しかし、これだけの低金利、だまって国債を買っているだけでは、期待した利回りを上げられない。生保であれば、損失が膨らむし、年金であれば会社の負担を増やすだけだ。そこで、格付けの低い債券に投資しようと言う動きが起こりつつある。格付けが低いと言っても、BB以下であれば、ジャンク債であるが、AやBBBであれば、一応投資適格債と言われる。こういった債券に投資する際に、ディフォルトのリスクを検討する、いわゆるクレジットアナリストへの需要が今後増してくるのではないかと思われるのだ。

 債券がディフォルトするとは誰も考えなかった時代に、クレジットアナリストなんて必要なかった。しかし、格付けによって利回りに差が出てくる時代。そして、その利回りの違いを果敢に取っていかなければ、座して死を待つだけの低金利。こういった時代だからこそ、クレジットアナリストへの需要が増してくるのである。

 米国では、社債の他に地方債のアナリストなども存在する。地方債だってディフォルトの可能性があるのだ。こういったアナリストへの需要が増してくることで、供給、つまり、アナリストも育つだろうし、マーケットも深みを増してくるのではないだろうか。



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