良い多角化、悪い多角化 その2

 HOYAという会社がある。眼鏡を作っている会社なので、ご存じの方も多いだろう。この会社のここ数年の業績の伸びは、眼鏡の売上が伸びたからではない。ノートブックパソコン用のハードディスクドライブに使われるディスクの売上が飛躍的に伸びたことが、この会社の業績が大きく伸張する要因となった。眼鏡とハードディスク。全く関係ないように思えるが、HOYAの作っているハードディスクはガラス磁気ディスク。この会社のガラスを磨く技術が、ハードディスクに応用されたのだ。つまり、全く違う分野に見えても実は、会社の要素技術を応用しできる分野に進出しているのである。

 大阪に永代加工という会社がある。本田向けにフロアマットを製造している会社だ。この会社がミサワホーム向けに住宅資材の製造を始めた。フロアマットの会社が住宅資材?そう考えると、何て馬鹿な多角化を始めたんだと思うかもしれないが、実は違う。この会社の技術力は、フロアマットを作ることにあるのではなく、合成樹脂加工品の成形技術にある。つまり作るものは何でも良いのである。自社の持っている技術を利用でき、他社が参入できないような製品を作ることで、多角化というのは十分上手くいくのである。

 自社が簡単に参入できるような分野は、他の会社も簡単に参入できる。そう言った分野に進出しても、資本を無駄に費やすだけだ。しかし、自社の持っている要素技術を応用できるような分野、そして、それが他の会社には参入できないような技術であれば、既存の製品と全く違う分野であっても、成功する可能性は十分あるのである。

 しかし、前回のエッセイで述べたキョウデンの場合はどうだろう。パソコン生産なんて誰でも出来る。今や、個人だって部品を買い集めてきて自作のパソコンを作る時代である。そんなときに、パソコンを作って、既存の事業以上の利益率を上げることが出来るのだろうか。詳細は調べていないので何とも言えないが、記事から判断する限り、他社の参入できないような、製品を作ったり、または直販システムに対応できるような物流・生産システムを作っているとは思えない。

 上場、及び店頭公開会社の資本は株主のものである。株主の利益を損なわないように多角化を行っていくためには、参入事業の利益率をよく吟味していかなければならない。つまり、参入することによる既存事業の安定性を高めることも大切かもしれないが、それ以上に、参入する事業がどの程度成功する可能性があるのか、競争力を持つことが出来るのか、そう言ったことをきちんと検討し、株主の利益をより高めるような事業を選別して参入しなければならないのである。そして、そんな簡単に、新たに上手くいく事業なんて見つかりっこないのである。結局、多角化というのは、大抵の場合、失敗に終わることになるのである。



back to my homepage


WebMaster:Kimihiko Uchida b obubeck@can.bekkoame.or.jp
or otherwise qzg00456@niftyserve.or.jp
©copyright 1998 Kimihiko Uchida