顧客のニーズに応えると言うこと

 昨日、某外資系証券会社のアナリストによる決算セミナーに参加してきた。その中で小売のアナリストが面白いことを言っていたので紹介したい。それは何かというと、「デフレ環境の中では経営者が優秀ではない会社には投資できない。」というもの。まぁ当然といえば、当然。別にデフレ環境でなくても、規制が緩和するに従って競争は促進されるわけだから、経営者の資質に問題がある会社には投資できないと思うのであるが、その次が面白い。どういう経営者が優秀ではないのかというと、「例えば、決算説明会で、社長が面白くもない話を長々としている会社には投資できない。」と言うのだ。

 面白いというのは、funnyとかamusingではなくinterestingということ。小売というのは顧客商売であり、顧客のニーズがどこにあるのかを常に探っていかなければならない。つまり、そう言った発想で相手の気持ちにたった行動がとれないような経営者では、駄目だということらしい。

 私も、全く逆の例(相手の気持ちに立って考える事の出来る会社は伸びていく)から、同様の思いを、数年前にマツモトキヨシの説明会に出席したときに感じた。マツモトキヨシの決算説明会に出席すると、数枚のデータ集を貰うことが出来る。例えば月次の既存店、全店ベースの売上高の推移。普通の会社は、月毎に、既存店の売上伸び率○○%、全店の売上伸び率●●%と数字を羅列するだけである。しかし、マツモトキヨシの場合は、違った。月毎に既存店、全店伸び率を羅列してあるのは同様だが、その上列に、その月に土曜、日曜、祝日が何日あったか、雨の日が何日あったかが、添えられているのだ。小売の売上は休みの日が何日あるかで大きく違ってくる。また雨の日と晴れの日でも売上が大きく違う。そう言ったテクニカル要因で、アナリストが、データを勘違いして理解しないように、そう言ったデータも併記してあるのだ。

 この資料を見たときに、マツモトキヨシというのは、相手の立場に立って、相手のニーズに応えようと努力することの出来る会社なのだなぁ、と強く感じたものだ。その後のマツモトキヨシの業績の伸張と消費者への認知度の高まりはご存じとの通りである。

 小売業の会社の経営者が、普段、相手のニーズを理解できないのに、商売だけが上手くいくはずがない。そう言った素養があって初めて、商売でも上手くいくのだと思う。そう言った意味で、昨日話を聞いた小売アナリストの「説明会でくだらない話を長々としている経営者は駄目。」という考え方には共感できる。くだらない話かそうでないかには、人それぞれの主観の違いがあるかもしれないが、少なくても、決算説明会の時期というのは各アナリスト、ファンドマネージャーとも忙しい中で、その説明会に駆けつけるわけだから、説明する方も、要点を簡潔に話すことが出来るよう、入念な準備が求められると思う。

 そういった対応がとれるような会社なら、商売においても、客の求めるものを、時期に応じて提供することが出来るのだろう。最近はテレビで特集される食材が、次の日に飛ぶように売れるらしい。しかし、そう言ったテレビをきちんと見て仕入れ対策をする会社とそうでない会社では、足下の売上の状況も、全く違うようだ。顧客のニーズがどこにあるかを常にアンテナを張っているかどうかの、違いである。

 不況不況と騒いでいるが、実は、顧客のニーズを吸い取る努力をしていないだけではないのだろうか。何度も触れているが、景気の悪さのせいにしないで、企業努力で業績を伸ばして貰いたいものだ。


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