PER

 22日より、日経平均の今期予想利益によるPERが算出されるようになった。22日は200倍台だったが、25日の月曜日には不良再建で前期大幅な赤字を計上していた銀行が決算を発表し、今期予想を発表したために、日経平均のPERも50倍台まで下がってきた。この調子だと今週末には50倍台前半までPERは下がることになるだろう。PER50倍台になれば、割安とはいえないまでも、それほど割高でもない。そうすると、今後は企業が発表した今期予想利益に対して、それが達成されるのか、それとも下方修正になるのかを見極めながら株価は推移することになるだろう。

 ここでまず、PERとは何ぞや?という疑問から解説しておこう。PERとはPrice Earning Raioの略であり、日本語では株価収益率と訳される。Priceは株価、Earningは利益であるが、株価が一株あたりの値段を使うので当然利益も一株あたりの利益を使う。つまり当期利益を発行済み株式数で割った数字を使うのである。そうするとPERを求める式は、

          株価 
PER  = ----------------
       一株あたり利益 

となる。株価が一株利益の何倍まで買われているのかを示す指標がPERなのである。言い換えると、投資した金額を利益によって回収するとしたら何年かかるのかを示しているとも言える。

 当然、PERの高い会社は割高、PERの低い会社は割安なのであるが、じゃぁ、PERの高い会社を売って、安い会社を買えば儲かるのかというと、そう単純ではないのが株式市場の面白いところである。同じ業界内でPERの安い会社を買えば儲かると生徒に説明している大学の教授もいるようだが、そんなに株式市場は非効率なマーケットではない。PERが高い会社は高いなりに、安い会社は安いなりの理由があるのだ。

 一株あたりの利益が20円の会社があるとしよう。株価が1000円だとしたら、PERは50倍。これだけ見ると随分株価は割高だなぁと思われる。しかしこの会社、来年は一株あたり利益が40円に膨らむとしよう。そうするとPERは25倍である。再来年は更に利益が倍増し80円になるとするとPERは12.5倍。そうするとこの会社の株価、1000円というのは随分割安だという結論になるのである。(PER12.5倍が割安かどうかは、人それぞれの見方があるとは思うが・・。)つまりPERを用いた株価の割高、割安の議論は、その会社の将来的な利益予想をふまえた上で行わなければならないのである。

 話を日経平均のPERに戻そう。一つの会社のPERを算出する際には、既に解説した方法で求めるわけだが、日経平均のPERを求める場合には、日経平均に採用されている225銘柄のPERを平均して求めるわけではない。日経平均採用銘柄全ての会社の時価総額を足したものを、日経平均採用銘柄の利益を全て足したもので割って求めるのだ。利益を全て合算する際には赤字の場合もマイナスで足していく。

 なぜ時価総額と当期利益を使うのかについては、次の式から理解できるはずだ。

          株価          株価 × 発行済み株式数     
PER  = ---------------- = ------------------------------       
       一株あたり利益       一株あたり利益 ×発行済み株式数   

                    時価総額       
                =  ---------------    
                    当期利益       

 つまりPERは時価総額を当期利益の額で割って求めると、定義しても良いのである。そして、日経平均のPERは日経平均採用225銘柄の時価総額を全て合算し、同じく日経平均採用225銘柄の当期利益を全て合算したもので割って求めているのである。昨年、11月くらいまでは日経平均のPERはまっとうな水準(60〜70倍)であったのだが、利益の下方修正や銀行の不良債権償却に伴う赤字決算が見込まれるようになって、徐々に上昇、そして本年3月には日経平均採用225銘柄全ての当期利益を合算してもマイナスの世界に突入してしまったのだ。そうするとPERは算出できなくなる。PERの水準だけでは割安、割高の議論は出来ないと最初に申し上げたが一つの重要な指標であることは確かである。そしてこれが算出できないのだから、日経平均も割安なのか割高なのか全く分からない、手探り状態が続いた。そんな中で、景気の悪化が深刻化し、企業業績が悪くなるぞと言うイメージが先行したものだから、株価はがんがん売られる展開となったのだ。しかし、兎にも角にも業績発表とともに今期予想業績を各社が発表しだしたことで、日経平均のPERを算出するための業績データも前期の予想から今期の予想に徐々に変更され、その結果昨日の日経平均のPERは55倍まで回復してきたのである。

 今後はこのPERが、今期業績をどのように織り込んでいくかにかかっている。あしもとの景況感は未だに回復していないが、下期には経済対策の効果も出てくるだろう。こういった諸々の経済情勢の中から今期の企業業績がどうなるかを予測し、それに伴って現在の株価が割安なのか割高なのかを議論できる、そう言う素地が整ってきたと言うことである。そして、このことは、市場参加者にとって、今までよりは合理的な行動が取りやすくなってきたと言えるのだろう。目先は景況感の悪化が回復していないことや、今後参院選が始まることから、軟調な展開も予想されるが、参院選に目処が付き始める頃には、株式市場も底をつけるのではないだろうか。


back to my homepage


WebMaster:Kimihiko Uchida b obubeck@can.bekkoame.or.jp
or otherwise qzg00456@niftyserve.or.jp
©copyright 1998 Kimihiko Uchida