消費

 先週、某外資系証券会社の主催でヨーカ堂の鈴木社長を招いてのセミナーが開催された。私は諸般の事情で出席できなかったのだが、後ほどこの証券会社の担当の方にお願いして、講演を録音したテープを頂いた。これを聞くと、何故ヨーカ堂がすごいのか、何故セブンイレブンが伸びているのかが、おぼろげながら見えてくる。

 鈴木社長によると現在の消費の低迷は消費税率アップによるものだという。これだけだと、まぁ、誰でも言っていることだし、別にここでわざわざ記すことでもない、今回の消費税率アップが消費に影響を与えたのは、消費者が消費税に対して3%から5%へ2%アップしたと捉えたのではなく、5%の消費税の導入と捉えたからだというのだ。

 ものがなかった時代には「現在」を考えた消費行動をとる。しかし現在のようにものが豊かになった時代には、「将来」を考えた消費行動をとる。将来にわたって現在の生活レベルを落としたくないと言った消費行動をとるようになると言うのだ。その結果、消費にお金を回さず、貯蓄の方へお金を回すようになっているというのだ。

 更に鈴木社長は続ける。消費が「経済学」から「心理学」に変わったのだと。政策当局者、及びエコノミストはそのことを認識しないと消費を理解することは出来ないだろうとのことだ。

 そして、鈴木社長はグループ会社の運営に当たって、重要視するのは商品政策だと断言している。消費者のニーズが何処にあるのかを探らなければ、小売業は行けていけない。セブンイレブンにしてもPOSデータを使ったシステムの目的は、消費者のニーズを如何に早くつかんで、それを店頭に並べるかにある。そして商品の回転率を高めなければ、好みの変化が激しくなっている現在の日本の消費者に対応していくことは出来ないとのことだ。

 日経ビジネスでは「不況で消費者を見失った日本の小売業」というタイトルで、「本当に消費意欲が衰えているのだろうか」との提言が行われている。消費意欲が衰えているのではなく、消費者の望む商品やサービスを提供していないだけなのではないかと。

 ここでは「しまむら」が寝具をレジの近くに置くだけで、売上が16%伸びたり、外資系の会社がサイズを多く揃えたり返品自由のサービスを導入することで、消費低迷と言われている中でも順調に売上を伸ばしているとの報告をしている。

 実際、自分の事を考えてみても、「こういうものが欲しい」と思って店に行っても、欲しいと思ったものが、置いていなかったり、店員がきちんと説明できないために購入を諦めるということが多い。

 もういいかげん、政府に頼るのはやめるべきだろう。政府の無策を嘆いても何も前進しない。それによって業績が低迷しても、結局は株価が低迷して投資家が、損失を被ってしまうのである。是非、個別の企業が、こういった景気低迷の中でも消費者のニーズをつかみ魅力ある商品やサービスを提供することで、成長力を取り戻して欲しいものである。そう言った会社が、現れたり、また今までの会社がそのように変身することで、株式市場も活性化し、好循環するようになるのである。人のせい(橋本首相?)にするのではなく、自分が何を出来るか考え、実行に移すしかないのである。そう言った経営者が数多く現れるのを期待したい。


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