株主に目を向ける

 先週の水曜日にファナックの工場に行って来ました。山梨の山奥にある工場です。

 富士吉田の駅からタクシーに乗り込んで、ファナックに向かったのですが、近づくに連れて、真っ黄色の建物が見えてきます。この会社、とても有名なのですが、工場の建物は全て真っ黄色なのです。当初は日野にこの真っ黄色の建物を建てようとしたらしいのですが、住民の反対にあって建てることが出来ず、山梨の山奥に建てることにしたとのことです。実際、自分の住んでいる隣に、こんな真っ黄色の建物が建ったら、嫌だろうなぁと思いますよ。太陽の反射で目がチカチカして来るんですよね。

 工場に近づくに連れて、更にびっくり。工場の前に並んでいる会社の車やバスも全て真っ黄色なんです。そして、工場の中にはいると更にびっくり。受付の女性の制服も、社員の作業着も真っ黄色なんです。そして、この工場で使われているロボットも、この会社の商品であるロボットも全て真っ黄色。徹底していますよね。

 会社に言わせると、ロボットを黄色にしているのは、これによって注意を促し事故を防ぐのが目的だそうです。また、会社の車を黄色にすることで、駐車場に置いてもすぐに自分の会社の車が分かると言うメリットもあるとのことでした。

 休憩室に入って、会社の広報担当の方から足下の業績や、経営スタンス等を伺いました。その中で非常に興味を持ったのは、株主対策を経営の柱に加えていくと言うことでした。

 この会社は当初より、@研究開発の強化、A製造のロボット化、B強い財務体質の3つを経営目標にしてきました。そして、収益をあげるにつれて、財務体質は強固になってきた事から、Bの強い財務体質に関しては、その目標的意味合いを失い、経常利益率3割を合い言葉に、収益を追求してきたのです。ところが、ここに来て、稲葉会長が、GEのウェルチ会長とディスカッションをしたり、GE出身でGEファナックの社長として就任してきた人と経営戦略について語り合う中で、財務の効率性について、再考させられるようになったとのことです。つまり資本の効率的運用を考えるならば、資産の項目に多額の現金を寝かしておくとは資本効率の悪化を招き株主のためにならない。再投資として、収益の高い事業に投資を行うか、そうでなければ、生み出した収益としての現金を何らかの形で株主に返還していくことで、資産効率の向上を目指していかなければならないのです。つまり、今はやりの自社株買いですね。全ての会社にとって自社株買いが、株主にとってプラスではありません。今申し上げたように、投資先のある会社であれば、そこに投資した方がよいわけだし、借金のある会社が自社株買いしても、借金の金利が増えるだけで、収益は悪化し、株主にとってメリットがあるとは思えません。しかし、ファナックのように財務体質が強固で、預金の資産に占める割合が高く、その上資産効率の悪い会社は、自社株買いが一番株主にとってメリットが大きいのです。

 ファナックが自社株買いに踏み切るかどうかはわかりません。本日の日経金融新聞には「検討を始めた」という表現に留まっています。また、工場見学の際のニュアンスでは、「財務体質のあり方について検討するように指示が下った。」とのことでした。

 しかしながら、このように株主に目を向け、株主の資金をいかに効率よく使うかを考えた経営を、始めたと言うことは株式市場にとっても非常に、喜ばしいことであります。そしてこのような会社が増えることが、株式市場全体を復活させ、投資家にとって魅力あるものにするための第一歩なのだと思います。政策も、為替も関係ありません。経営者が株主のことを考えた経営を始めることが、日本株式市場再生に一番重要なことなのです。


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