制限時間

 某居酒屋チェーン店の社長の話を聞いてきた。居食屋という新しいコンセプトを提案し、居酒屋業界の中では、異色の成長を示しているあの会社だ。『居食』というのは、酒屋と定屋を掛け合わせた、造語とのこと。週刊ダイヤモンドでも特集されたので、ご存じの方も多いだろう。

 昨年12月の売上も、前年比プラスと、消費低迷の中でも順調に業績を上げているのだが、その要因が、なるほどと思わせるようなものであったので、ここに紹介したい。

 居酒屋が、売り上げを伸ばすためには、客数を増やすか客単価を引き上げるかのいずれかを達成しなければならない。しかし、客単価はこの景気低迷の中、そんなに簡単には上がらない。当社の宴会コースは、2,000円、2,500円、3,000円とあるわけだが、そのうち、2,500円のコースを充実させ、広告でも、これを目玉とすることで、今まで2,000円のコースを注文していたグループを、2,500円に引き上げるよう努力したようだ。これは成功したようだが、逆に今まで3,000円のコースを頼んでいたグループも、2,500円のコースの充実ぶりを見て、こちらに乗り換えたらしい。その結果、客単価はあがらず・・。

 あとは客数である。空いている店であれば、客数を引き上げることは、それほど難しくないかもしれないが、当社は、既に超満員の店ばかりである。そうすると客数を増加させるためには、回転率を上げるしかないのである。そこで、12月のみ、2時間の時間制限を導入することで、客の回転率を引き上げようとしたらしい。

 みなさんも経験があるかもしれないが、「すいません、制限時間なんです。」と言って追い返されるのは、非常に不愉快である。特に、食べ物がまだ出てきていないのに、そんなことを言われたら、思わず、「ばかやろー」と叫んでしまうだろう。当社でも、これを懸念し、ドリンクは5分以内、フードは15分以内に、テーブルに出すことを目標に、オペレーションを強化することにしたそうだ。

 12月の忘年会シーズンに向け、グラスの並べ方から調理の仕方の細部に至るまで、改めてチェックし直したようだ。ドリンク5分、フード15分のオペレーションを達成出来るだけのオペレーションを作り上げた上で、当社は再度12月に制限時間制を導入するかしないかを社内で論議した。そうすると「お客様に夢を与える場を提供する」という当社のコンセプトに反するのではないか、「2時間で店を追い出されて、思い出を作ることが出来るか。」といった社内の議論が盛り上がり、結局忘年会シーズンに制限時間制を導入することは中止になった。

 ところが、オペレーションが充実したおかげで、結果的には顧客回転率は上昇し、当社の12月売上は目標を上回る事になったとのこと。特に混雑しているお店では、頼んだ食事がなかなか出てこない。その結果、「頼んだものが、まだ来てないよ〜」という不満、そして店を出るに出られなくなってしまうことは多々あるだろう。しかし、これを無くすだけで、顧客回転率は上昇し、店舗売上は更に上昇するのである。

 他の居酒屋チェーン店にも、是非見習って貰いたいものである。頼んだメニューが1時間経っても出てこないと本当に腹が立つんだから・・。


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