間違えましたと謝ること

 当局は当初、大手20行はつぶさないと明言していた。しかし、北海道拓殖銀行は都銀でありながら、北洋銀行への営業権の譲渡という選択をしなければならなくなった。大手20行はつぶさないと言ったではないかとの質問に当局は、拓銀は海外から撤退しているので大手ではない、と言ったのである。その結果、金融システムへの不安は増大することになった。

 山一証券は「飛ばし」はないと言い続けてきた。しかしながら実は、簿外債務として2,000億円以上の額が表面化し、自主廃業の道を選択しなければならなくなった。経営者が早い時期に、「飛ばし」を表面化させていたら、一時的には行政処分などを受けたとしても経営そのものを揺るがすことにはならなかっただろう。経営者が保身に走ったために、傷口が大きくなりすぎたのだ。

 今回橋本首相は赤字国債発行による2兆円の所得税減税を発表した。しかし、財政構造改革という政策を転換するのかとの問いに、赤字国債発行0は6年間にやり遂げるもの、政策の転換ではないと答えた。ということは、所得税減税は今年度限り。果たして、これで、減税分を消費に回す人などいるのだろうか。どうせ、来年にはもらえないお金である。景気もそれほど良くはない。雇用にすら不安が出てきた。減税分は、使わないで金庫にでも入れておこうと考えるのが普通のような気がする。案の定株式市場は、減税発表当日こそ、日経225で555円の上昇となったが、その次の日は379円、そして本日は846円の下落となってしまった。一時的な所得税減税の効果を見極めるよりも、倒産リスクを恐れることになったのだ。

 みなさん、もっと失敗に寛容になりませんか?上のいずれの例を見ても、決断すべき人が、自分の過去の決断を「失敗しました。ごめんなさい。」と言えずに隠し続けたり、妙な理屈を付けて正当化し続けたために、傷が大きくなってしまっているのだ。決断すべき人が「以前の決断は間違いだった。」と言える環境が整っていれば、こんな事にはなっていないのである。

 米国では、会社を倒産させてしまった人でも、新しいアイディアで、すぐに新会社を設立してしまう。投資家も、過去の経歴を気にせずに、新たな資金を提供してくれると言う。翻って、日本の場合、どうだろう。会社を倒産させてしまった人に、資金を提供しようと言う人が現れるだろうか。

 また、橋本首相が、政策を転換すると言ったときに、それを歓迎する形で、政権に留まることは可能だったのだろうか?多分、間違った責任を追及され、政権は交代することになるだろう。その結果、一度決めたことを、ずるずると引きずってしまう。

 昭和の初めに戦争に導いた人達も、そんな環境の中で、一度決めた決断を変えられずに、敗戦に至ったのではなかったのか。

 もう少し、失敗に寛容になりましょう。逆に早く撤退したこと、少ない損失で抑えたこと、状況を的確に分析し政策を変更できたこと、を評価できるような風土を作りましょう。それが、更に大きな損失を防ぐ、一番重要なことではないでしょうか。株式投資も同じです。間違えたと思ったら、損失覚悟で売却することです。それが、より大きな損失を防ぐこつです。


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