ネットワークのマナー

 ネットワーク上の友人であるベルデ氏、wagon氏が相次いで、ホームページを閉鎖、または会員制へ移行した。非常に残念なことである。両名とも相場に関する非常に素晴らしいホームページを運営していた。個人投資家にとっては数少ない貴重な生の情報だっただろう。これがなくなることは、一つの指針を失う事にも匹敵するのではないかと思われる。

 彼らが、こういった行動をとらざるを得なかった理由は、ホームページでの発言に対する、匿名メールの恐ろしさを感じたからだという。この話を聞いて、私は、ビートたけし等のお笑いタレントの話を思い出した。お笑いタレントが道を歩いていると、一般大衆は普段テレビで見慣れているせいか、旧知の仲のような反応を示すという。道ばたで指を指して笑ったり、頭を殴ったり、ギャグパフォーマンスを強要したり・・・。

 テレビと現実の区別が付かないのだ。お笑いタレントは、自分の目の前でもテレビの中と同じような反応をすると思っているのだろう。お笑いタレントにとっては、初めて出会う人でも、一般大衆にとっては、いつも見ている、"良く知った人"なのだ。その結果、人と人とが出会うときに必要なマナー、礼儀というものが欠落してしまうのだろう。

 今回のベルデ氏、wagon氏の場合も、ホームページの閲覧者にしてみれば毎日(正確に毎日ではないかもしれないが)読んでいるので、ネットワーク上は良く知った相手になるのだろう。そして、その良く知った人が、自分の考えとは違う考え方を示したので、一言言いたくなったのかもしれない。しかし、ホームページ運営者にしてみれば、見ず知らずの人である。全然知らない人から、おまえの考えは間違っていると匿名でメールが来たら誰だって、びびってしまうだろう。

 初めての人に手紙を送る時には、自分が何者なのかを説明した上で、相手に対する礼儀をわきまえた文面で送るのが筋であろう。初めての人に会うときは、名刺を差し出すか、自分が何者なのかを説明して、相手の都合を確認した上で、会って欲しいと依頼するのが普通だろう。ネットワーク上でも、同じなのである。ネットワークだから、普段の礼儀を省略しても良いとは言えない。また、ホームページをいつも読んでいて、親しみを持っていたからと言っても、そう言った礼儀が省略されて良いはずはないのである。

 幸いにも私の場合は、2年以上このホームページを運営しているが、そう言った無礼なメールは一つもなかったように記憶している。いつも、「そこまで、丁寧に書かなくても良いのに。」と思うくらいに、マナーをわきまえた、礼儀正しいメールばかりであった。その結果、私も返事をきちんと書かなければと思ってしまうのである。

 ネットワークが社会に普及するに連れ、無礼なメール、暴力的な言葉に溢れたメールが増えてくるのかもしれないが、ネットワークも実社会も結局は同じ、生身の人間によって構成されているのである。実社会で失礼な行為は、ネットワーク上でも失礼に当たるのである。その辺をきちんと啓蒙するような団体や、書物がもっと増えることを期待したい。

 私がパソコン通信(nifty-serve)を始めた頃は、書店に行っても、パソコン通信を解説した本は数少なかった。そして、数少ない解説本はどれもまず最初に、ネチケット(ネットワーク上のエチケット)を守るようにとの注意書きが、何ページにも渡って解説してあった。しかし最近は、通信関係の本が書店に溢れている上に、いかに簡単に通信ソフトを扱うかに重点が置かれすぎて、ネチケットに全く触れずに終わる解説本ばかりになってきた。こういった啓蒙本の怠慢が、今のネットワーク秩序の崩壊に繋がっているのではないだろうか。

 当然、こんな本がなくてもマナーというのは普遍であるはずだ。しかし、右も左も分からず、パソコン屋さんやマスコミの言いなりになってパソコンを購入し、付属のソフトでパソコン通信や、internetに入ってきた人にとっては、そう言ったことを理解するまでにも、相当な時間を要するのではないだろうか。ネットワーク参加者のマナー向上を期待するのではなく、通信関係の啓蒙書の努力がもっと必要ではないかと思うのである。


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