軟調な株価

 山一証券の自主廃業ニュースが出た直後の11月25日から昨日までの東証業種別株価指数の騰落率をみてみると面白いことが分かる。上昇率の上位業種は1位 金融、2位 不動産、3位 保険、4位 証券、5位 輸送用機器、6位 銀行なのである。これに対し下落率上位5業種は1位 鉄鋼、2位 パルプ、3位 建設、4位 医薬品、5位 鉱業となっているのである。

 北海道拓殖銀行、山一証券金融機関の破綻が続いていたため、金融システム不安が株価を軟調にしている最大要因と見ている方もいるかもしれないが、株価の関心事はとうに、金融システム不安から離れているのである。

 1位の"金融"はアコム、プロミスなどの消費者金融の株価が好調なことから、金融システム不安がなくなったことを示すものではない。しかし、3位以降の保険、証券、銀行は、山一証券の破綻が発表されるまで、大きく売り込まれてきたセクターだ。このセクターが先月の25日以降堅調な株価の動きを示していると言うことは、少なくても、その後の政府の対応(預金者保護のための公的資金の投入)を一旦は評価していると考えても良いのだろう。

 逆に、株価が軟調なセクターである鉄鋼は、韓国ウオン安を懸念していると思われる。韓国にはPOSCOなどの鉄鋼会社が存在するが、これらの会社がウオン安によって輸出攻勢を強めるために、国内の鉄鋼会社が業績を悪化させるだろうと言う見方から、株価が売られているのだろう。また、医薬品は9月以降、売上げが急激に悪化している。医療費の自己負担率が10%から20%に引き上げられたことで、病院に行く人が激減しているらしい。当然医薬品の売上げも前年同月比では惨憺たる有様のようだ。こういった売上減を嫌気して、株価がふるわないのだろう。しかし、これは大正製薬などの大衆薬を扱っている会社にとっては朗報だ。病院に行かないとなると、自分でドラッグストアに行き、薬を買うことになるだろうと思われるからだ。ただ、最近は悪性のインフルエンザが流行しているそうなので、我慢せずに、体調が悪いときは病院で診察を受けた方がよいだろう。10%分の医療費をケチったために死んでしまっては、もともこもないだろうから。

 以上のように、最近の株価は、金融システムへの不安から、再度景気の下ぶれリスクを織り込みつつあるものと思われる。15日には日銀短観が発表される。ちまたの予想では、相当、経営者の景況感が悪化していると伝えられているが、これが発表されて、悪材料出尽くしになるのか、それとも、やはり景気は悪化しつつあるとの見方から、株価は軟調な展開を続けるのか。予断は許さない。


失敗を許さないと言うこと

 先日、某ベンチャーキャピタル(VC)会社でファンドマネージャーをやっている方と飲む機会を持つことが出来た。その方との話の中で、銀行の審査体制についての話が、非常に興味あるものであった

 私は元々、銀行の担保主義が土地バブルを生み、そしてバブル崩壊へ至ったと考えている。つまり、担保を土地以外のものに移行することで、現在の経済構造を変革することが可能になるのではないだろうかと思うのだ。人でも良いし、ソフトでも良い。土地ではなく多様な担保を評価できる体制を作ることが、ベンチャーキャピタルを活性化させ、経済を活性化することが出来るのではないだろうか。

 VCのファンドマネージャーは、銀行マンとの会話の中、こういうことを聞いたらしい。「消費者金融は統計学の世界だ。統計的に貸し倒れを算出し、これをもとに貸出を審査する。銀行はいまだに、社長とさしで酒を酌み交わし、金を貸すかどうか決める。これでは、消費者金融にかなわない。」と。

 確かに消費者金融は、統計的に貸し倒れを算出し、これに基づいた貸出を行っている。男性か女性か、消費者金融を過去に利用したことがあるかないか。年齢はいくつくらいか。こういったデータから、貸すか貸さないかを判断しているのである。何故、銀行に同様のことが出来ないのだろうか。どう考えても、銀行マンが、こういった統計的処理を理解できないわけがない。やろうと思えば、すぐにでも導入できるだけの人材と経営資源は持っていると思われる。

 酒を飲みながら、こんな話をしていたのだが、その時にふと考えたことかがあるのだ。統計的に貸し倒れ率をはじくと言うことは、逆に言うと、数%の貸し倒れは起こりうることを前提に貸していると言うことになる。貸し倒れ率が5%なら貸さない、2%なら貸し出そうと判断すると言うことは、2%の貸し倒れはしょうがないと考えているのだ。

 翻って、銀行の貸出を考えてみると、一人ずつ、個別に判断していく。これは、預金者から預かった大切な金だから、失敗は許されない。1件の貸し出したりとも、回収が出来ないようなことがあってはならない。こういった考え方で、貸出案件を審査しているのではないだろうか。だから、消費者金融のようにデータに基づいて、貸し倒れ率をはじいて貸し出すというようなことを、組織としてやっていくことが出来ないのではないだろうか。

 失敗を許さないと言うことは、言い換えると可能性をつぶすことでもある。ある程度の失敗には目をつぶることも、事業を営む上で必要なことかもしれない。銀行が、消費者金融のようになるのがよいかどうかは分からない。しかし、失敗を前提にするか、それとも、失敗をしてはいけないと言うことを前提にするのか、というような考え方から経営を見極める方法もあるなぁと考えた次第である。  酒を飲みながらふと思いついたことなので、論理にあらが目立つが、ご意見をお聞かせください。


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