三洋証券の会社更生法申請

 三洋証券が会社更生法を申請した。三洋証券に勤務されている社員の皆様には頑張って欲しいとしか言いようがない。子会社のノンバンンクが原因だけに、三洋証券の社員にしては、やり切れない気持ちだろう。

 三洋証券は当然、子会社に投資信託会社を持っていたので(商法上は子会社でも関係会社でもない。念の為。)、これらの投信がどのような対応になるのかが注目される。何度も投信コーナー他で解説しているとおり、投資信託は分別管理されているため、証券会社の倒産によって、売却金額に影響がでることはない。あくまでもマーケットの価格だけが投資信託の変動要因である。しかしながら、いくつか気になることもあるのである。

 まず昨日からの報道の中で、投資信託に関するものを抜き出してみると、まず第一に売却金額に関しては、保全されるということが報道されている。新聞報道では"MMFや中国ファンド等の投資信託の売却代金は保全される"と言う表現をとっていたが、これは全ての投資信託について、適用されるだろう。また株式や債券等、有価証券の引き出しには応じるとも報道されている。投資信託も有価証券であるからこれを引き出すことも可能であろう。ただし、引き出しても、実際に換金する場合は指定証券会社(投資信託はファンドごとに約款によって、販売及び解約や分配金の支払いをする証券会社が指定される)を利用しなければならないので、引き出しても無意味と言うことになる。

 問題は、実際に投資信託を購入している人達(正確には受益者)がどういう行動を取るのかが注目されるのだ。解約が一気に噴出すれば、当然投資信託会社はこれらの解約に応じて、ファンドで保有している有価証券を売却することになる。解約の額によっては、大きくマーケットにインパクトを与えるだろう。実際、本日の株式市場をみると、三洋投信が多くの株式を保有する銘柄、特に店頭公開銘柄に関しては、これを嫌気して大幅に値下がりしている。先ほど記述したように、投資信託は、証券会社の経営内容に関わらずに分別管理されているので、投信保有者の方には冷静な対応を望みたい。このファンドを売却して他の会社のファンドを購入しても、手数料分だけ損するだけである。(運用の巧拙は別にして・・・。)

 そして、昨日からの新聞その他の報道に関して、投資信託に関する報道が非常に少なかったのが問題なのである。上述したように投資信託会社は証券会社と商法上の関係は非常に希薄である。そのため、新聞紙上でも投信会社の対応についての記述は全くなかった。しかし、投信保有者は逆にこれで不安になるだろう。その結果、解約が相次いだとしたら、投資信託会社の業績も急激に悪化し、取り返しがつかなくなることだって考えられる。今の時期こそ、投資信託の安全性を啓蒙するチャンスでもあるのだ。投資信託が法律によってどれだけ守られているかを誰かが声を大にして一般の投信購入者、そして投信購入予備軍に伝えていくことで、理解は深まると思うのだ。投資信託は投資対象有価証券の価格変動によるリスクは大きい代わりに、販売証券会社の信用リスクの影響は非常に小さいということを、理解していただきたいのである。

 更に、今まで証券会社の倒産を頭においた法制度の整備が進んでいなかったために、噴出している問題がある。指定証券会社の制度である。上述したように投資信託は、設定時に販売証券会社が約款によって指定される。これは約款変更によって直ぐに解決する問題だが、証券会社一社が販売証券会社として契約していた場合、これを引き継ぐ会社を強制的に指定する制度がないのである。今回の場合、解約業務などは、そのまま三洋証券が引き継ぐことになるが、新たに資金を拠出する事は出来ない。投信保有者の中には、定期的に同じファンドを購入することで、ドルコスト平均法によるコスト低減を目指していた人もいるだろう。そういった場合に、ファンドを今まで購入してきた意味が無くなるのである。

 投信を解約しようとした場合の資金の保全は投信法、及び信託法によって確保されているものの、投信の永続性、長期保有を念頭に置いた販売証券会社の制度に関しては、曖昧な点も多いのも事実である。これを機に、再度確認して法制度の整備を進めて行くべきだろう。


back to my homepage


WebMaster:Kimihiko Uchida b obubeck@can.bekkoame.or.jp
or otherwise qzg00456@niftyserve.or.jp
©copyright 1997 Kimihiko Uchida