投信の銀行窓販

 ジェイ・ディー・ジャパンの調査によると、銀行が投資信託の窓販を始めた場合、約2割の人が購入意欲を持っているとのことである。これは非常に驚くべき数字である。現在の投資信託の純資産残高は、1,200兆円と言われる個人金融資産の5%にも満たない水準である。投資信託を保有する世帯数も、10%に全く届かない水準だ。それなのに、銀行が投資信託を販売することで、20%の人達が、投信の購入を考えたとしたならば、これらの数字が一気に倍以上に膨らむのである。

 それと同時に、何故20%の人達が、今まで投信を購入しないのかを考える必要もあるだろう。投資信託の購入を考えない人達については、投信に対する啓蒙の不足、元本変動のリスクに対する許容度の問題、過去のパフォーマンスに対する不信感などの理由が挙げられるだろう。しかし、銀行の販売する投資信託は購入するという人達にとってはこれらの理由は当てはまらないと思うのである。

 その第一の理由は支店網の数の違いがあるのかもしれない。銀行、及び信用金庫の店舗は全国至る所にある。都銀だって全国にある支店の数は400〜500程度はあるのだ。しかし、今まで投資信託を販売してきた証券会社の店舗は国内大手4社にしても100ちょっとである。やはり、店舗が近くにあるのと無いのでは安心感が全然違うだろう。株式売買の手数料を大幅にディスカウントすることで、大きく成長してきた米国の証券会社、チャールズシュワブ証券にしても、全国に支店網を作ることで顧客の安心感を得ることに成功してきた。電話による受付で商売をするのだから各地域に支店を作る必要はないのだが、支店を作ることで顧客は支店の看板を見て安心し、チャールズシュワブ証券に電話をしたのだそうだ。(アメリカ金融革命の群像より)

 第二に証券会社の支店は入りづらいと言うのがあるかもしれない。私だって、この業界にはいる前、(学生時代であはるが)、証券会社の店頭は非常に敷居が高かった記憶がある。銀行だと、1,000円で預金口座を作っても、何も文句を言われないが、証券会社では中国ファンドだって最低10万円が必要だ。一般の株式投信は10,000円で購入できると知ったのは、この業界に入ってからである。(^^ゞ 証券会社というと金持ちしか利用できない、株式購入は金持ちの趣味と言った考え方が今でも、一般的には存在するように感じる。こういった考え方が銀行での投信販売に期待をしているのかもしれない。

 いずれにしろ、銀行の投信販売に期待している層が、確実に存在することは事実のようである。しかし、実際にこういった層を、投信購入に結びつけられるかどうかは、これからの投信業界の努力にかかってくるだろう。受益者の期待に添えるような商品の提供、そしてパフォーマンスの提供を目指していかなければならない。特に株式へ投資する商品については、受益者の理解を促すような様々な努力が必要になってくる。自己責任原則を強調しすぎると、買おうと思っていた人達も、その行動が制限されてくるかもしれない。大衆薬にOTC薬品(病院でもらえる薬を、大衆薬品に転用 "H2ブロッカー"とTVで宣伝しているのが、その例)が登場したが、TVで服用上の注意ばかり強調しているために、売れ行きは当初期待していた額から比べると、相当低い額になっているようだ。これと同様に、投資信託についても、リスクばかり強調していては購入者のすそ野は全く広がらないだろう。まずメリットを理解してもらい、その後に、そのメリットを得るためのリスクが存在することを説明していかなければならないと思うのである。そして、そのような説明を、投信販売に参入する銀行には期待したいと思うのである。過去の変動保険の販売と同じ轍は踏まないで欲しいと願うばかりである。

 今回のアンケート調査は投信業界の人達にとっては、期待を持たせる内容になったと思う。ただ、こういったアンケート調査には注意が必要だ。某テレマーケティング会社の社長が言っていた。「過去、そして現在の調査は非常に役にたつし、これを元に戦略を組むことは可能である。しかし、将来、どう行動するかに付いてのアンケート調査は全く役に立たない。回答者が、実際に将来、自分の回答どおろに行動する確約はないのである。」とのことである。みなさんだって経験があるでしょう。実際その時になってみないと分からないのが人間なのである。


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