納税者番号制

 先日、追加型株式投資信託の税金徴収の方法が、平均信託金の計算によるみなし課税方式から総合課税方式に変更すると日経新聞に報道された。これに関して、10月24日のエッセイにおいて、「非常に良いことであり、これによって投信の理解者が増えるのではないか。」と書いた。しかしながら、実のところ不安もあったのである。平均信託金による投資信託の取得金額の把握方法がなくなると、税務当局はどうやって、取得金額を把握するつもりなのだろうと。

 現在の株式におけるキャピタルゲイン課税のように、取得金額がいくらであっても、同じように売却金額総額における比率で税額を計算されるとしたら、これは大問題である。制度の改善ではなく悪化になってしまう。しかし、追加型投株式資信託の取得金額を把握する方法はあるのだろうか。大抵の受益者は、受益証券を保護預かりとするので、販売証券会社に於いては各ファンドの取得価格を把握することはたやすい。しかし、受益証券を引き出して、受益者が受益証券を自分で保管していたとすると、取得価格の把握は不可能である。投資信託は無記名式であることも、取得価格を把握できなくしている要因でもある。それでは無記名式を記名式に変更するのだろうか?そう考えると、国民背番号制を導入しない限り、追加型株式投資信託の取得価格の把握は無理だろうと考えていた。

 しかし、国民背番号制の導入は、以前に一度失敗している。サラリーマンにとっては年収は全て把握されているし、国民背番号制を導入されても痛くも痒くもない。プライバシーの保護を反対理由に挙げている人もいるが、背番号制の導入が無くてもプライバシーは至る所で崩壊されている。(ま、この是非については、そのうちに議論したい。)要するに、背番号制の導入は、収入を確実に把握されることに拒否反応を示す人達、特に自営業の人達が反対しているために、自民党が導入を出来ないで居るのだ。つまり、こういった人達は現在の税制に於いて優遇されているのである。

 本日の日経新聞に於いて、金融所得について納税者番号制が導入されると報道されている。まだ大蔵省の発案段階で与党がこれを受け入れるかどうかは分からないが、ビッグバンを控えて一つ問題がクリアされつつあると言っても良いだろう。これによって追加型株式投資信託における不公平な税金徴収制度は公平な形に移行していく道筋が見えてきたと思う。総合課税には至らないようなので、追加型投資信託や株式の損失で、所得税を節税することは出来ないようだが、これも将来の課題としてはあげられているようだ。

 着実にビッグバンへの対応は前進している。これを生かすも殺すも国民の考え方次第、そして金融機関の対応次第だろう。投資信託についても今までの様々な規制は排除されつつある。この機会を生かせる会社が明日の勝者となるのである。経営者の奮起を期待したい。  


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