遺伝子検査

 血友病はX染色体上に作用するらしい。男はXYだから、X染色体がやられると、そのまま発病してしまう。しかし、女性の場合はXXなので、片方のX染色体がやられても、もう一方のX染色体でカバー出来るので、発病しない。両方のX染色体が冒されてはじめて発病することになる。その結果、血友病は男性に多く発病する病気なのだそうだ。

 女性で片方のX染色体だけ冒されている場合、表面上は健康体と何ら変わらない。血友病に冒されているかどうかは、遺伝子検査をしなければ分からないのである。(やっと本題に入ることが出来そうだ。)

 本日、立川まで行って、検体検査を行う店頭企業を取材してきた。ヒト遺伝子の解明によって、薬の開発も大きく変貌してくる。それぞれの遺伝子にあった薬を使うことで、より効率的に治療することが可能になってくるというのだ。そうすると、当然遺伝子検査を行う企業だって収益が上がるのではないかと考えたのだ。しかし、事はそう簡単ではない。

 まず、遺伝子検査を行うと癌にかかりやすい人、筋ジストロフィーや一部の結石などの遺伝子疾患、そして、糖尿病等の生活習慣病等にかかる可能性の高い人が分かってくる。当然、ここで保険会社が動くだろう。そういった遺伝子に欠陥のある人からは高い保険料を取ることで、保険料支払いのリスクを大幅に引き下げることが出来る。先日、米国ではクリントン大統領が、保険審査の際、遺伝子検査を審査要件にしてはいけないと宣言した。米国は素早いですね。日本の厚生省は、全く動く気がないようだ。

 こういった、保険の問題が一つ。そして、遺伝子検査には社会的な問題もある。こういった検査が、公になることで、差別がおきることも考えられる。エイズ検査では、発病していないにもかかわらず、抗体を持っていると分かっただけで、社会から隔絶されようとしたことは記憶に新しいことでしょう。

 社会的な問題だけではなく、倫理的な問題だって生じるだろう。一番大きいのは子どもを生むとき。親に何か遺伝子的欠陥を持つ事が分かった場合に、中絶と言うことも考えられるだろうし、伝統のある家系では、結婚そのものを認めないといった動きがでてくるかもしれない。

 こういった問題が存在するため、現在の遺伝子検査は感染症(結核等)といわれるものに限られる。これは人の遺伝子を検査するわけではないので、倫理的な問題は生じないとのことだ。

 遺伝子操作だけではなく、遺伝子検査にもこういった問題が多々存在するのです。そしてこれは長い時間をかけて、学会、そして世論のコンセンサスを得る形でしか進めていくことが出来ないし、またコンセンサスなしに進めてはいけない問題なのです。臓器移植でさえ、まともな議論が出来なかった日本で、こういった議論を進めることが出来るのだろうか?私は甚だ疑問だ。

 しかし、遺伝子治療が今まで解決することの出来なかった病気に、光明を見いだすことが出来るのも事実です。短所にばかり目を向け、議論を避けるのではなく、長所をしっかりと見つめながら、コンセンサスを固めていかなければならないのです。

 専門外のため、間違った言葉遣いをしているかも知れません。お気づきの点はご指摘ください。


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