FC展開

 FC(フランチャインズ)とは、日本のフランチャイズ・チェーンの代表的企業が加入している社団法人日本 フランチャイズチェーン協会によると、次のように定義している。

 フランチャイズとは、事業者(「フランチャイザー」と呼ぶ)が他の事業者(「フランチャイジー」と呼ぶ)との間に契約を結び、自己の商標、サービス・ マーク、トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識、および経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の 継続的関係という。

 FC展開している企業としては7-11を初めとするコンビニ等が有名であるが、このFC展開に暗雲が灯り始めているのではないかと、思われるような話を相次いで聞いた。先週話を聞いた某コンビニチェーン店の話である。この会社は、直営でも出店し、FCでも店舗を展開するという両面作戦を採っているが、今年上半期の出店状況を聞くと、FC出店が計画通りにいかなかったというのだ。この会社は直営による出店を計画数よりも引き上げることで全出店数には影響がなかったが、FC出店が思い通りにいかないと言うのは、FC展開を行う企業にとっては成長の原動力にひびが入り始めていると言うことである。中部地方を拠点とする別のコンビニチェーン店は、FC展開が計画通りに行かなかったことで、出店計画を大幅に引き下げ、それによって株価も大きく調整にさらされることになった。

 先週は、FC展開を行うDPE(写真の現像ですね。)チェーンの話も聞いた。ここも、FC展開が思うようにいっていないとのことであった。理由を聞くと両社とも、良質なFCオーナー希望者が減っているというのだ。

 FCオーナーにはふた通りのタイプがある。土地や資金を自分で出資してFCオーナーとなるタイプと、資金や土地は、チェーン展開を行う事業者(フランチャイジー)が出資し、FCオーナーは労働力のみ提供するタイプである。前者の場合はフランチャイジーは設備投資に多額の資金を必要としないことから、多店舗展開を目指すチェーン店にとっては、ありがたい存在である。その上、このタイプの場合、FCオーナーの利益は売上げに比例するように、契約することが多く、売上げを増やせば増やすほど、FCオーナーの利益も増えることになる。そのため、このタイプのオーナーは売上げを増やすために、一生懸命働くことになる。

 しかし後者の場合、資金をフランチャイジーが提供しなければならず、店舗開発に多額の資金、及び時間がかかる。そして、契約の仕方も最低利益を保証する代わりに、売上げが増えた場合のFCオーナーの収益は逓減するように契約することが多い。つまり、一生懸命働く事へのインセンティブが前者のタイプよりも、減少するのである。

 そのため、FCチェーン展開を行う企業は、前者のタイプ(土地と資金を自分で拠出できるFCオーナー)を数多く集めたいのである。しかしながら、最近は、こういったタイプの応募が少なく、後者のタイプ、特に脱サラ組のFCオーナー希望者が多いそうだ。

 コンビニはもう飽和状態であるとか、DPEは価格競争が厳しく、成長力は小さいと見る人は多い。しかし私はそうは思わない。コンビニは規制緩和による扱い商品・サービスの増加等によりまだまだ伸びる余地は大きいと思われる。その上利用年齢層が、まだ一部に偏っている。若年男性、壮年男性が利用の大部分を占める構造であることから、サービスの多様化により、主婦層、ジルバー層の利用増加により、まだまだ成長余力はあると思うのである。DPEだって、成長の原動力は、余暇の拡大とカメラの単純化による写真を撮る人の増加であった。昔はマニアのものであったカメラが今や、使い捨てカメラの普及により、女子中学生でさえ持ち歩くようになったのである。使う人の増加は、余暇の拡大によってまだまだ広がる。店舗さえ拡大して行ければDPEチェーンだって拡大余地はまだまだあると思うのだ。

 しかしながら、需要は伸びていっても、供給の方が追いつかない、つまり、良質なFCオーナー希望者が減っていることで、企業が、FC店舗を思うように展開できないことが、これらの企業の成長を阻害する可能性が高まってきたのである。今後は、ブランド力によって良質なFCオーナーを集められるトップ企業のみが成長を続けていけることになるのか。それとも、設備投資資金を使って直営店での出店戦略に切り替えることで、成長を続けていくのか。FCチェーン展開を行ってきた企業にとって、分岐点にさしかかってきたようである。




証券離れ

 ちょっと、古い記事だが今月21日の日本経済新聞に次のような記事が載っていた。

個人の「証券離れ」一段と

株式・投信・公社債など 保有世帯軒並み減少

 個人投資家の「証券離れ」が一段と鮮明になっている。証券広報センターが二十日発表した「証券貯蓄に関する全国調査」では、株式など証券で資産運用する世帯の割合が前回調査(九四年)に比べ低下した。なかでも、投信は三・三ポイントの大幅減少。投信は日本版ビッグバン(金融大改革)で個人金融資産の受け皿として期待され、大蔵省も投信改革に乗り出しているが、現在の商品性に対して投資家は不満を強めている。  調査は今年五月、全国の一万千五百世帯(世帯員二人以上)を対象に実施、七千七百十五世帯から回答を得た。貯蓄保有状況(複数回答)では、「外国の証券」を保有する世帯が前回調査に比べて〇・八ポイント上昇の二・一%となったが、その他は軒並み減少。「国内の投資信託」が八・八%と三ポイントを越える減少となったのをはじめ、「株式」が一九・二%と一・三ポイント低下。「公社債」も六・七%と一・二ポイント下がった。  投信は、八八年度調査の一六・七%をピークに一貫して低下している。種類別では、中期国債ファンドが五六・一%と過半を占める.一方、株式投信は一三・一%に過ぎず、株式相場の低迷などから人気離散が続いている。

 株式や、投資信託の比率の低下の要因として、価格の下落もあると思うが、やはり、売却によって保有比率を引き下げたり、または他の資産が伸びたのに、これらの資産が伸びなかったことに寄る比率の低下が大きな要因だろう。

 この理由として記事中では、商品性をあげている。しかしながら、商品の多様性と言うことでは、数日前のエッセイでも書いたように、日本の方が幅広いと思う。金利がもっと高ければもっと多様な商品を開発することは可能になる。例えば、債券を購入し、その金利分で株式を購入し、元本を確保しながら、株式の上昇も享受するような商品とか、これにストップロスを組み合わせることで、株式の組入比率を更に高めることも可能だろう。しかし、現状の金利水準では、ちょっと無理。ヘッジファンドが商品の多様性の際に引き合いに出されるが、あくまでも、こういった商品はリスクが高く、メインの商品とはならない。一般的な株式投信、アクティブ型、インデックス型の株式投信の資産がなかなか増えないのは、ひとえにパフォーマンス、そして投資対象である日本の株式市場の低迷が主要な要因だと思われる。

 そして、株式市場の活性化には、有価証券取引税の廃止や手数料の自由化などが言われているが、こういった改革は、小手先に過ぎない。最終的には投資対象の魅力がアップしなければ、市場の活性化にはならないのである。つまり、上場株式の魅力が高まること、株主利益を増やす投資家が買いたいと思うような企業が増えなければならないのである。投信改革のエッセイでも書いたが、経営者が株主のことを考え、株主のために経営を行うようにならなければ、投資魅力は高まらないのである。そうなれば、現在のような総会屋への利益供与だって無くなるだろう。経営者が株主のことを考えた経営を行うようになれば、総会を短時間に行おうなどとは考えないはずである。時間をかけても株主に経営の現状を理解してもらおうと努めるだろう。米国の会社の中には、24時間以上かけても株主総会では、自分の言葉で株主に理解してもらおうと考える経営者が多い。日本でも、そういった会社が増えることが、株式市場の活性化にもつながるし、それが投信のパフォーマンス向上につながり、投信の活性化にもつながるものと思う。時間をかけても、本質的な部分をきちんと変えていくことが、重要なのではないだろうか。


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