投信の見なし課税廃止

 本日の日経新聞で投信の見なし課税を大蔵省が見直すことが報じられた。これは画期的なことであるうえ、わかりにくい投資信託の制度を分かりやすくし、ファンドを買う人にとってもプラスになる制度である。今まで行われてきた、または行われようとしている一連の投資信託改革の中で、初めて消費者のためになる改革なのではないだろうか。

 見なし課税の廃止と言ってもよく分からない方が多いと思うので簡単に説明しよう。追加型株式投資信託の場合(日経新聞では追加型投資信託と書いてあったが、追加型公社債投資信託にはこういった制度はないのである。日経新聞も、もう少し勉強して欲しいものである。)、分配金(いわゆる配当金ですね)に関しては源泉分離課税で20%が税金として差し引かれる(正確には普通分配金の20%)。ところが、値上がり益に関しては、いくらで買っていくらで売ったかが分からないと、税金がいくらになるかを計算することが出来ないのである。買付代金と売却代金が分かればよいのだから、そんなの簡単だろうと思うだろう。しかし、事はそんなに簡単ではない。何故なら、投資信託は無記名証券なのである。投資信託を買った人が、その受益証券を自分で保有していた場合には、買付代金を証明することが出来ないのである。

 そこで、各投資信託の購入者が、いくらでその投資信託を購入したかを計算するために、個々の投資信託の買い付けた人全ての買付価格の平均を平均信託金とし、その投資信託を保有している人は、全て、この平均信託金で買い付けたことにしたわけです。つまり、ある時点で平均信託金が6,000円だったなら、5,000円で購入した人も、7,000円で購入した人も、6,000円で買ったことにしようと言う事なのですよ。そして、基準価額が8,000円ならば、8,000円−6,000円=2,000円の20%を税金として徴収するのです。5,000円で買った人も7,000円で買った人も同じように400円の税金を徴収されるのです。本来なら5,000円で買った人は3,000円の収益ですから20%の課税率なら600円の税金になるはずだし、7,000円で買った人は1,000円の収益ですから200円の税金でよいはずなのです。それが、両方とも同じように400円の税金を徴収されていたのです

 わかりにくい上に、この制度は、基準価額を悪化させる効果を持つと言ったマイナス要因もありました。基準価額は純資産を口数で割って求めます。追加設定がある場合に、基準価額と同じ値段で買い付けるとするなら、一口当たりの値段は変わりません。でも、税金を差し引いた売買基準価額で買付を行うのだ。その結果、基準価額と買い付ける値段が違うために、その分だけ一口当たりの値段、つまり基準価額は値下がりすることになる。簡単に解説したが、詳しくは投信コーナーの解説を読んで欲しい。平均信託金による基準価額の希薄化という表現で解説を行っている。

 不公平な上に、わかりにくく、基準価額悪化の要因にもなっているこの制度。みんなが、改正すべきだと考えていたのですが、やっと今回、見直されることになったわけです。分かりやすくなることは、投信の購入にプラスに働くでしょう。売却損を出した場合に損金算入できるのかとか、数回に分けて投信を購入した場合に、買付代金を移動平均で算出するのか先入先出法で算出するのかといった問題については、まだ決まっていないのかもしれません。しかし、こういった細かい問題についてもそのうち解決されるでしょう。

 投資信託は、それでなくても分かりにくく、理解しにくいものです。制度上だけでも、分かりやすくすることで、投信の購入を検討する人が増えればと期待してやみません。


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