営業利益

 中間決算の発表が徐々に本格化してきている。また決算の発表を控え、修正計画の発表も日経新聞をにぎわしている。その中で、いくつかの企業が、決算発表によって大幅に株価が売られている。期初に発表した売上げ、及び利益に対して下方修正になるような結果であったり、減益になると言うことで株が売られているのではない。増収増益となるのに売られているのである。

 材料出尽くし、つまり、「多分業績は好調に推移しているはずである」という思惑で株が買われていたものが、決算発表によって、市場参加者全員に知れ渡り、買い手がいなくなったことが要因の一つであろう。しかしそれ以上に気になるのは、営業利益の伸び悩みである。増収増益の業績を発表したにも関わらず株が売られている企業は、概して営業利益が伸び悩んでいるのである。

 ここで簡単に、損益計算書の構造を説明しておこう。ご存じの方は読み飛ばしていただいてかまわない。売上げに対し、その売上げた財やサービスの原価を差し引いた物が売上総利益である。粗利とも言う。ここから、販売費や一般管理費を差し引いた物が営業利益、そしてこれから営業外収益(主に金融収支)を差し引いた物が経常利益、そしてここから特別損益(土地売却益とか有価証券売却損等々・・・)を差し引き、税金を差し引いた物が税引後当期利益である。

 つまり営業利益が伸びない理由は、@売上げが伸びていない、A原価が上昇している、B販売費や一般管理費が上昇している、のいずれかであるが、売上げの伸びより営業利益の伸びが少ないという場合には@は除外されるので、AかBが重要なポイントとなる。インフレの兆候があるわけではないので、Aというのも現状では除外される場合が多いだろう。そうすると、残りはBである。

 バブル絶頂期の頃、私は新人ファンドマネージャーとして、企業の発表する業績の分析に余念がなかった。(本当かなぁ・・・。) その時に、多くの企業の損益計算書を見て、非常に不思議に思ったのである。何故、売上げの伸びより営業利益の伸びが低いのだろうと。実際、89〜90年のバブル期には、営業利益の伸びが売上げの伸びに比べ極端に低い企業が多々あった。それらの企業の言い分はほとんどが、「将来の成長に備えた、先行投資負担」であった。しかしその後の利益の推移はみなさんも知っているとおりである。

 特に販売費及び一般管理費の中には人件費のように固定費となるものがある。これが上昇すると言うことは損益分岐点が上昇することにつながる。つまり売上げが予想に反して減少したときの利益の減少は、思いもよらなかったものになるのである。将来の売上げ増に備えて人員を増やしたり、研究開発費を増やしたくなるのは経営者として当然かもしれない。しかし、それも程度の問題である。あくまでも、売上げの伸びに比べ営業利益の伸びが下回らないような範囲で増やしていかないと、後々身動きがとれなくなってしまう。

 こういった会社の経営陣に問い合わせると、大抵は「長期的な視点に立って欲しい」と答えるのである。「目先的に営業利益が伸び悩んだとしても、それは将来の売上げ増に対する備えである」と。しかし、将来売上げが増える保証は何処にもない。はっきりと分かっているのは損益分岐点が上昇しているという事実だけである。つまり投資家サイドから見ると、リスクが上昇しているのである。

 ただし、営業利益の伸び悩みという観点のみで判断してはいけない。販売費及び一般管理費の上昇が何に起因するのかを、より詳細に分析し、損益分岐点の上昇につながっているのかを判断しなければならないことは言うまでもないのである。


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