システム特許

 本日の日経金融新聞に非常に興味深い記事が載っていた。メリルリンチ証券がブロックトレーディングシステムの特許を取ったというのだ。内容自体に目新しい物はないらしい。単に今まで何処の証券会社も特許を申請していなかっただけなのだそうだ。メリルリンチ証券がこの特許をどう使うのかは分からない。この特許を利用して、国内の証券会社全てからロイヤリティー収入を得ようとしているのかもしれないし、単に、特許を取得しただけで、現実には特許に抵触していても当面は、見て見ぬ振りをするのかもしれない。しかし、このことは、国内証券会社のいくつかの問題点をあぶり出しているような気がする。

 まず第一に、メリルリンチ証券会社が特許を申請しようとしていることを国内証券会社のシステム関係者が知らなかったわけではないと言うことだ。しかし、経営者が、総会屋への利益供与問題で忙殺されているのを見て、上司、及び経営者に何も伝えていなかったらしい。これは何も、総会屋問題が無くても一緒だったと思う。つまり、「上に言っても理解されないだろう。」こう思ってしまうことで、重要な経営課題が経営者に知られずに、時が過ぎてしまう。そういった事は、この問題に限らず、今までも多々あったのではないかと思う。いくら、問題の重要性を進言しても動かなかった経営者が、他社が動き出した途端に慌てて、「うちはどうなってるんだ!」と怒鳴りつける。こういったことが、頻繁にあれば部下も、「何を言っても無駄。」と感じてしまうだろう。

 なぜ、経営者がシステムのことを理解できないのかを考えると、第二の問題点が浮かび上がる。「派生商品は35歳を越えると理解できない」という、格言(?)が幅を利かし、これを理由に勉強しようとさえしない人たちが多い。システムに関しても一緒。この年だからもう駄目ですよ。こういって努力することから逃げるのである。他の業界は知らないが、証券界はこういった努力のしない老人達が多いように感じる。そしてそういう人たちが経営の中枢で、物事を決めていたりするのである。経営者がプログラムを組める必要はないであろう。しかし、どういう事は出来て、どういうことは出来ないのか。導入することでどういうメリットがあって、デメリットは何なのかを知るためにも勉強する必要はあるのではないあろうか。人間、一生勉強であると私は思っている。勉強することを止めた時点で、言い換えると向上心を無くした時点で生きる価値など無くなってしまうと思うのだが、これは言い過ぎだろうか・・。

 第三の問題点は、国内証券会社にとって、特許問題に非常に鈍感であったと言うことだ。お互いの著作権に対して非常に寛大だった。著作権という概念そのものが希薄だったのだろう。外資系が国内で証券業務を営む中で、「これは、まだ特許を申請してなかったのかぁ」と驚き、申請してくる事が、今後も起こりうるのではないかと思うのである。そしてふと気が付くと、国内で証券業務を営むために、外資系に何らかのロイヤリティーを払い続けなければ行けなくなる。こんな時代が来てもおかしくないだろう。今のままでは。

 


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