トップセミナー その2

 昨日の続きです。コマツのエキシマレーザー事業に関して、「何故、コマツでこの事業を始めることになったのか?」と言う質問がありました。建設機械のコマツがエキシマレーザーを開発できたのは何故だろうと言った疑問が、投資家みんなにあるのです。コマツの社長はこの質問に対し、エキシマレーザーは20年前に各社一斉に参入した事業だったと教えてくれました。ところが物にならないので、他社はみんな撤退する中、当社だけが細々と研究を続けていたのだそうです。それが今になって花開こうとしているとのことでした。

 昔、日経ビジネスで東芝がノートブックを何故他社に先駆けて大量生産できるようになったのかを調べた記事を読んだことがあります。ノートブック(当時の東芝はダイナブックというノートパソコンを市場に供給していました。みなさんの中にも使った覚えのある人がたくさん居ることでしょう。)を大量生産する際のネックとなる技術は電源部門だったそうです。小さくて、パソコンに対応できる安定的な電源をどこも作ることが出来なかったのだそうです。他社は、電源部門は収益を生まないことから子会社化したり、本社ではない地域の事業所に追いやっていたそうです。しかし東芝は、昔のまま本社に電源部門を置いていた。それが、たまたまノートブックの開発の際に有利な展開となったと書かれてありました。

 結局、両社とも社内に無駄を抱えていたことが、新しい戦略事業につながったのです。現在の経営の流行は『集中と戦略』のようです。今回のトップセミナーで話を聞いた会社のほとんどがこの言葉を使います。そして、この言葉を使った方が機関投資家の受けは良いのです。でも、本当にそれで良いのかなと思うんですよね。無駄って大切なのではないかと。無駄な部門を社内に抱えていることは株主に対しても、誠実な行為ではないと考えられがちです。しかし、必要な無駄を如何に抱えておけるかというのは、重要な戦略だと思うんですよね。または、『今は収益を生まないけれども絶対、ものになる』と信じ続けるか。

 無駄という表現をしましたが、逆の考え方をすると、事業ポートフォリオをどう構築するかと言うことだと思うのです。『集中と選択』と言えば格好良いけれども、要は非常に大きな収益を上げられると思う事業のみをやっていこうと言うことですよね。それは、株式投資の際に、東京エレクトロンとニコンとアドバンテストだけでポートフォリオを組むのと同じ様なものだと思うのです。私なら、そんなポートフォリオは組みませんよ。小売りも少し混ぜますし、化学株や住宅株の中にだって良い会社がいっぱいありますから、その辺のバランスを考えながら、ポートフォリオを組むと思うのです。

 今日のセミナーでは、武田、HOYA、アドバンテスト、荏原の話を聞いてきました。HOYA以下の3社は社長が中期的な戦略を語ってくれました。各社とも業界環境が好調(と予測される)なためか、強気な見通しを立てています。武田は開発担当の副社長が出てきて、今後の医薬品業界の開発動向について話をしてくれました。これは面白かったです。結論としては遺伝子治療が今後医薬品の概念を変えていくとのことだったのですが、例えば肥満にしても、これに関与する遺伝子が三つあることは既に分かっているというのです。そしてこの遺伝子を操作する形で、肥満を治療することは可能になってくるとのことでした。ガンに関しても同様。そしてこういった、バイオテクノロジーが医薬品の概念を変え、100%効く薬(逆に言うと、効く薬を選択するということのようです)が登場してくるとのことでした。2000年くらいまでの日本の医薬品業界は非常に厳しい時代が続きますが、それを生き残った企業は、バラ色の未来が待っていることでしょう。楽しみにしております。


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