アメリカ金融革命の群像

 野村総合研究所より『アメリカ金融革命の群像』という本が出版されております。ジョセフ・ノセラというフォーチュン誌の編集者が1994年にSimon&Schuster社から出版した『A Piece of the Action : How the Middle Class Joined the Money Class』を訳したものなのですが、これがなかなか面白い。特に日本の金融関係者が読むことを強くおすすめします。私も最後まで読み終わっていないのですが、VISAカードやフィディリティがどのような軌跡をたどって現在の地位を獲得したかを時代を追って解説しています。

 そして、その本の中でフィディリティ(アメリカの投信運用会社)がMMFを設定し、資金を集めだしたときのことを書いた件では、なんと私が昨日essayに記したことと同じようなことが書かれているのです。

 MMFは1970年代に高インフレの元、短期金利が高止まりしているのに、銀行預金金利は低い水準に据え置かれている事への対抗として考え出されたものでした。また当時の預金体系は日本と同じように小切手を切るためには当座預金(金利が付かない)を利用しなければならず、金利が付く普通預金で小切手を切ることが出来ませんでした。フィディリティ社の当時の新社長はMMFに小切手を切る機能を付け加えた形で商品開発を行い、投資家から絶大な信頼を勝ち得たのです。

 つまりお金を引き出し安くすれば、人はもっと買いたくなるという当時は誰も考えつかなかった発想を投信に持ち込んだのです。これこそ、サービスの基本、他の小売業者と同じようにファンドを商品として販売することなのです。顧客が何を求めているかを考え、求めているサービスを提供することが、一般のサービス会社だけではなく金融機関にも求められているのです。

 私は某業界紙の7月号においても同様のことを書きました。運用会社は投資対象として他社の経営を分析することはあっても、自社の経営を省みる形での経営分析は行われていないと。もっと、小売業者やその他の事業会社のマーケティング手法やCSの手法を学び、実践していく時期に、運用会社はもとよりその他の金融機関もあるのではないかと思うのです。


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