ソロスの錬金術

私は、ファンドマネージャーが、ファンドを運用しているときに世間に対して 自分の相場観やファンドのポジションを話すべきではないと考えている。間違 ったときに、ファンドマネージャーとしての権威を失墜するとかいうのではなく、 自分のポジションを話すことで相場に影響を与えてしまう可能性があるからだ。 現在の私が、『半導体株は買いだ』と叫んだところで、相場への影響は全くな いと言って過言ではないだろう。しかしながら、ソロスが日本株は買いだと言 っただけで、相場が動いてしまうのである。これは相場操縦ではないか。実際 には買いだと言っているときに自分は売り抜けているかもしれない。一昨年に フィディリティ投信のビニック氏が同じ様な件でSECの調査を受けたことがある。 運用報告書にこの銘柄は良いと書いてあったのを読んで投資家がその銘柄に殺 到したのだが、その時にビニック氏は逆に売り抜けていたのだ。相場はだまし あいなのだから、それはそれで良いではないかと考える人もいるかもしれない。 しかしながらそれは違うと思う。マーケットは均等に情報が伝わって初めて、 信用できるものとなるのだ。嘘の情報が駆けめぐるマーケットで、大切なお金を 託すことは出来ないのである。

また、自分のポジションを公表すると言うことは、自分の手の内をさらすこと でもある。勝負であるのなら、手の内がばれた時点で負けである。相場観を公表 していたために、機動的に自分相場観を修正できなくなってしまうことだって多 々あるだろう。

ソロスの売買の情報は瞬時にマーケットを駆けめぐる。中には噂や、ブローカー が流しているものも多いだろう。しかし、ソロスがマーケットはこうあるべきみ たいな形で公表する場合も多いように思う。特に為替に関しては、ソロス自身が 公の場で色々なことを述べている。こういったことから、ソロスに関して私は あまり、好意を持っていなかったわけであるが、『ソロスの錬金術』を読んでい たら、なんと、私が危惧していたのと同じ事を述べている文章を見つけた。 『私の見通しは偏っているため、修正を迫られることがある。長期的な見通しを 重んじるようになり更に悪いことに、それを公表したりしたら、破産するかもし れない』ちょっとニュアンスは違うかもしれないが、自分の意見を公表すること に対する危惧が表明してあるのである。

ただし、こういう文章も見つけた。『私の考えを公にするために記録を取ること が、ミスを素早く発見して修正する能力を鈍らせているようで、心配になってき た。なぜなら、記録をとればとるほど、感情的になるからである。』ESSAYを書き 始めた身としては非常に参考になる文章である。常に冷静にあり続けたいもので ある。

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