読書備忘録 ザ・ゴール

 全米で250万部を超えるべストセラーになった書である。小説形式になっているが人間関係が複雑ではないので読みやすい。分厚い本なのに二日もかからず読み終えた。

 内容はと言うと、様々な書評で書かれているとおり、工場の生産部門において、何をなすべきなのか、言いかえると企業の究極の目標(ゴール)は何で、その目標を達成するために、工場は何をすべきなのかと言うこと。イスラエルの物理学者のサジェスチョンを参考に、アレックスという工場長が、この解答を見つけ出すために奮闘すると言うストーリーだ。

 で、その解答はと言うと、要はキャッシュフローを重視すべきという点に要約される。小説の中では、生産のリードタイムを短くして、在庫、特に仕掛り品を減らす事で、企業の収益を上げていく過程が、詳しく描かれている。つまり在庫が減るのだからキャッシュフローが改善し、リードタイムが短くなる事で顧客企業からの受注も増えると言う好循環に入っていくのだ。

 「日本人には読ませたくなかった」という衝撃的なコピーで販売されているが、そもそも、日本企業では、このような生産分野での改善は今までも地道に行われてきたのではないだろうか。それもQC活動という形で現場の人たちの手で。

 小説の中では、工場長、それに数人のブレーンが、仕掛り品削減のために、様々な思索を行う。優先度の高い商品には色の違う紙を張りつけたり、一回当りの製造個数を少なくする事で無駄を省いたり。こんな事を全て、工場長とそのブレーンが現場を見回って、提案し議論し実践していくのだ。工員は単なる労働力としてしか描かれていない。小説の中では、指示された事を、どれだけ正確に、労働者の権利を侵されずに、実行するかだけが、工員の存在価値である。

 しかし、日本では、QC活動という現場単位の生産改善努力が継続的に行われてきた。そして、QC活動によって、無駄を省きリードタイムを短くし、世界で通用する工場を作ってきたのである。そして、そのノウハウは、工場が海外に移転しても受け継がれているのだろう。だからこそ、日本企業は強かったのだ。つまり日本企業が自分の強さを認識するためには読むべき本なのかもしれない。

 



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