投資信託を読む

 久しぶりに、とーっても理解しやすい投資信託の解説書を見つけました。私の投信解説よりも更に噛み砕いて、例えを用い、分かりやすく解説しています。特に、投資に対する考え方、個人投資家がどのように考えて投信を選択すべきか、投信を購入する目的は何なのか、そして、年齢毎にどのような投資を行っていくべきか。こう言った問題に対し、本当は難しい投資理論を使って解説しているのに、個人投資家でも理解できるような分かりやすい例を用いて解説してあるので、多くの投資家にとって、投信を親しみを持って理解する事が出来るでしょう。(ちょっと誉め過ぎかな〜)

 目次は以下の通り。

第一章 資産運用のエース、投資信託の世界
 1 二〇〇〇年初のできごと
 2 投資信託の種類と性格
第二章 投資信託の光と影
 1 株式投信のメリットとデメリット
 2 日本的%叶Mの課題
第三章 難しい投信選び
 1 投信選びの落とし穴
 2 優良投信はあるのか
 3 「規模の限界」という問題
第四章 インデックス・ファンドを考える
 1 コスト上の優位性
 2 見直されるインデックス・ファンド
第五章 資産形成のポイント
 1 「キャッシュフローを生む資産」が決め手
 2 長期・継続投資の本当の意味
 3 投資の心理学――なぜ株式を長く持ち続けられないのか
 4 インフレにどう立ち向かうか
第六章 目標設定とポートフォリオづくり
 1 ターゲットをどこに置くべきか
 2 残された時間と利回りの関係
 3 あなたのポートフォリオづくり
 本を読んでいる時に、一瞬、私の投信解説を借用したのかと思ったくらいに、私の考え方、解説の仕方に似ているところも多いのです。ただ、いくつか、異論、及び、解説の足りなさを感じる点もありました。例えば信託財産留保金についての記述。この本では、単なるコストとしてしか記述がなされていません。確かに解約する投資家にとってはコストなのですが、信託財産留保金はどこかの業者が搾取する手数料ではなく、ファンドに残していくお金ですから、長期投資を行っている投資家、解約をしない投資家にとっては、コストではなく、利益になります。信託財産留保金が多いほど、残った投資家にとっては、利益が大きくなる事になります。この事を考えると、「単なるコストと考えて、少ないものを選ぼう」という著者の解説には、首を傾けざるを得ないのです。

 また、資産の大きいファンドは避けるべきとの考えにも、単純に頷くことは出来ない。著者は、米国の調査で資産額の大きいファンドはパフォーマンスが良くないとの結論が出ていると書いているが、私の読んだスタディでは、「資産額とパフォーマンスに相関はない」と結論付けていた。そもそも、資産額が大きければ、選択する銘柄が決まってしまうので、パフォーマンスが平均並にしかならないとのロジックは、運用を知らないとしか言いようがない。資産額が大きかろうが小さかろうが、同じ情報の中から同じように分析して銘柄を選択しているのだから、それほど選択する銘柄に違いは出ないのである。同じような銘柄を購入していても、それぞれの銘柄をどの程度購入するかでパフォーマンスは大きく変わってくる。そもそも個人的には、パフォーマンスの巧拙は「何を買うか」ではなく「何を買わないか」であると思っている。従って、資産額の大きいファンドは、同じような銘柄しか買えないから陳腐なパフォーマンスにしかなり得ないというのは、誤った認識だと思うのである。某超大手証券の販売する超大型ファンドのパフォーマンスが悪いと言うことが、資産額の大きいファンドのパフォーマンスは良くないという事の必要十分条件ではないはずである。それに、マゼランファンドは資産額が大きくなってからも、素晴らしい成績を残したではないか。

 更に、アクティブファンド、いわゆるファンドマネージャーが運用するファンドで良い成績を収めつづけるファンドはないのだという結論を得るために、著者は各月の上位10ファンドを比較して解説している。これはさすがに無謀。上位10ファンドに入るということは、それだけで相当大きなリスクを取っているという事であり、それを何ヶ月も続ける事など不可能だ。一般にアメリカではクオーターズと言う言葉がある。年間のパフォーマンスの上位四分の一に入れば、ファンドマネージャーは、よくやった、頑張ったと言われるのである。そして、それを何年も続ける事が出来れば、ファンドマネージャーとしては、安泰である。従って、日本のファンドマネージャーを評価する際にも、上位10位などとケチな事を言ってファンドマネージャーを非難するのではなく、年間でのパフォーマンスの上位四分の一に入るファンドが次の年にどうなっているのかといった長期的視点で解説して欲しいと思うのである。(それだけのパフォーマンスデータを持っているファンドは数えるほどしかないとは思いますけどね。)長期投資が重要といいながら、ファンドマネージャーを評価する時には月毎のパフォーマンスを追っかけるというのはどう考えても、矛盾してやしませんか?



back to my homepage


WebMaster:bobubeck bobubeck@can.bekkoame.ne.jp
©copyright 2001 bobubeck