特殊法人改革と特殊法人債

 連日のように新聞や雑誌には「○○公団実質債務超過!」「○○公団の膨大な不良債券」といったショッキングな見出しが踊っている。そして小泉内閣は特殊法人改革を目玉に国民の人気を集めている。確かに、特殊法人の改革は必要だし、特に隠れ借金を増やすよりは、全て国の借金として明確にした方が良いのは明らかなのだが、「赤字を出しているのは問題」「債務超過に至る会社を作ったことは問題がある」というような世論誘導には疑問を感じる。そして、そのような報道を受けて、特殊法人の発行する債券までもが売られてしまう現状に至っては、何をかいわんやである。

 そもそも利益が出るような事業であれば民間がやれば良いのである。利益が出ない事業だけれども国民生活に必要な事業であるからこそ、政府が企業を設立して事業としているのである。さらに、ほとんどの特殊法人はその設立根拠法によって、利益が出た場合には国にその利益を拠出しなければならない事になっている。つまり、利益を蓄積する事で資本を増やす事が許されていないのである。従って、債務超過かどうかを議論する事は、特殊法人にとっては意味のない事なのである。不良債権を負担するだけの資本の厚みがないから債務超過になるのだから。

 そもそも債務超過なのかどうかと言う点に関しても、いいかげんな議論が続けられている。第一に多くの特殊法人は負債項目に、リスクの大きい事業を続けるために、また赤字が出てしまうような事業を行うために、多くの引当金が積まれている事が多い。この引当金は、負債項目に計上されていながら、資本のようなものである。これを資本に計上すると、見かけ上数%の自己資本比率(出資金を資本と考える)しかない企業が、実は30%以上の自己資本比率を持つ企業である事が多いのである。

 更に、経済雑誌などで債務超過と騒がれている道路公団に関しては、道路資産の90%を償却するとして計算しているのである。普通、不動産を購入した場合、建物は減価償却するが土地は減価償却は行わない。道路資産の90%を償却すると言うのは、さすがにやりすぎ。そんな計算をすれば、経営資源の重要な要素として土地を使うような企業は、よほど資本が厚くない限り債務超過になってしまう。

 特殊法人を改革しなければならに理由は、@現在、必要がなくなっている組織がある、A存在意義を維持するために新たな事業に進出している、B国が行う必要のない事業に進出し税金を無駄に使っているかもしれない、C利権の温床となっている、D国の負債が明確にならない(隠れ負債となってしまっている)、等であって、特殊法人が債務超過であることや赤字体質である事が問題なのではないのである。

 



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